
【C-hub Meetup Vol.2イベントレポート】自治体DXの現場から学ぶ、CIO補佐官の信頼構築ナレッジ4選

2025年5月、うるるは、自治体DXの推進におけるキーパーソンであるCIO補佐官が、悩みや課題、取り組み事例などを気軽に共有し、横のつながりを育む実務者視点のコミュニティ「CIO補佐官HUB(略称:C-hub)」を発足しました。現在月1回のペースでCIO補佐官がリアルに集い語り合う「Meetup」を開催しています。
第2回となる今回は、全国各地のCIO補佐官ら9名が参加し、「自治体職員との信頼関係の築き方」や「CIO補佐官の理想のスタンス」、「自治体連携のあり方」まで、より深く実践的な議論が交わされました。

本記事では、そこで共有された“今すぐ使える実践ナレッジ”を4つに整理してご紹介します。
▼Meetup Vol.1のレポートはこちら
https://blog.uluru.biz/10598/
▼「CIO補佐官HUB」の詳細については、プレスリリースをご覧ください。
自治体DXのキーパーソン「CIO補佐官」初のコミュニティ『CIO補佐官HUB』始動 横の連携を通じて、全国のDX推進力の底上げを目指す ~
Meetup Vol.2参加者紹介:
角田 仁 氏
愛媛県松山市・東京都昭島市・鳥取県湯梨浜町 CIO補佐官
小林 宏至 氏
茨城県那珂市CIO補佐官
竹田 圭助 氏
山口県宇部市・福島県南相馬市・東京都府中市 CIO補佐官
井出 昌浩 氏
栃木県宇都宮市 CDXO補佐官
桶山 雄平(株式会社うるる)
徳島県小松島市 CIO補佐官。うるる取締役副社長、うるるBPO代表取締役社長
櫻井 俊寿 氏(総務省)
自治行政局地域政策課 地域情報化企画室 地域情報化第三係長
※順不同
目次
ナレッジ①:現場から始めよ――信頼は“並んで動く”ことで生まれる
- 市役所の窓口エリアをぐるっと回り、LANケーブルが抜けていないか?を職員と確認するなど現場の作業に同行
- 「職員と同じ空間でなるべく時間を過ごす」ことを最優先にする
- 全職員向けのDX研修をゼロから設計・登壇し、「庁内で誰よりも業務を把握している人」という認識を獲得
- 提案資料よりも、現場でのやりとりや雑談から得た「温度感ある情報」が支援の質を左右する
- 「あの人がいると安心する」と言われる状態を目指すことで、CIO補佐官という“外部人材”の存在が日常に溶け込む
ポイント:信頼は“理解される”ことより、“一緒に過ごした記憶”から生まれる
ナレッジ②:否定は信頼の入り口――あえて嫌われる勇気
- 「2年後に異動があるからできない」という職員に対して、あえて全否定
- 「異動する前提で仕事するな」「異動は勉強しない理由にならない」など、あえて言いにくいことを指摘
- 自身を「社外取締役」「とざま」と位置付け、あえて“悪役”として組織文化に切り込むスタイルを貫く
- リスクを取ってでも「本当に良いものを目指す」姿勢が、結果的に信頼を得ている
- 一方で、成長意欲ある職員を見つけては研修・登壇・表彰などの“プロモーション”支援も行い、対立だけでなく背中を押す関係性も構築
ポイント:「忖度しない他人」だからこそ、信頼されるCIO補佐官像がある
ナレッジ③:「規模」で変わるCIO補佐官の役割と“入り込み方”
◉ 小規模自治体
- 担当職員も少ない中、実質“課長”のように現場業務に入り込む
- 毎週のタスク管理や進捗確認など、運用面での密接な伴走が求められる
- 職員からの相談は日常的で、「内部の一員」として見られる関係性が築かれる
◉ 大規模自治体
- デジタル部門だけでも数十名体制。CIO補佐官は抽象度の高い壁打ち・方向付け役
- 職員からは「お墨付きをもらうための意見」を求められることが多く、大局的な立場で支援
- 初期フェーズでは「どこまで関わるか」の距離感に悩むが、半年ほどで自然と最適解に落ち着く
ポイント:制度の肩書ではなく、“現場との最適距離”を見極める感覚が問われる
「CIO補佐官ってこういう役割です、って最初から定義できたらいい。でも、現場ごとに答えは違う。臨機応変に“関係性を設計する力”が大事なんです」と、語る参加者もいました。
ナレッジ④:空気を読みすぎずに踏み込む――信頼構築のコミュニケーション設計
- CIO補佐官は「外から来た人」として見られるが、信頼関係の出発点は“同じ目線に立つこと”
- 自身が元公務員※だった経験を踏まえ、「言われたら嫌だなと思うことは最初から言わない」ことを徹底
- 一方で、「外部だからこそ言えること」をバランスよく伝える——基本は褒め、時にチクリと指摘
- 例えば、庁内で当たり前になっていた「打ち合わせが毎回5分遅れる文化」などに対して、毅然と指摘し改善へ
- チクチク言いすぎると距離ができるが、逆に遠慮しすぎるとCIO補佐官の価値が出ない。ちょうどいい“踏み込み加減”を対話の中で探っていく
ポイント:信頼構築は「言わない優しさ」と「伝える誠実さ」の両輪から――
※このナレッジは公務員経験のあるCIO補佐官の方がシェアしてくださいました
おわりに:信頼構築の正解は「関係性を設計する力」にあり
CIO補佐官という肩書きがあっても、自治体や職員との関係性は千差万別です。
現場に入り込んで一緒に汗をかく人もいれば、あえて“とざま”として厳しく指摘する人もいます。


一見バラバラに見える4つの実践ナレッジに共通するのは、「この人となら一緒に前に進めそう」と思わせる力でした。
- 職員と物理的に一緒に時間を過ごすこと(ナレッジ①)
- あえて嫌われることを恐れず、信頼を勝ち取ること(ナレッジ②)
- 自治体の規模や状況に応じて関与の度合いを柔軟に変えること(ナレッジ③)
- 空気を読みつつも、言うべきことは誠実に伝えること(ナレッジ④)
これらはすべて、「関係性をどうデザインするか」に集約される実践知だと感じました。制度や技術だけでは進まない自治体DXにおいて、「人とどう関わるか」こそが、最も重要なインフラなのかもしれません。
次回予告:「C-hub Meetup Vol.3」開催決定!
次回のMeet upは2025年7月16日(水)18時からスタートです!

今回のディスカッションを踏まえたテーマは、
自治体DX推進計画の実行現場 〜計画と現場のギャップをどう埋める?〜。
構想と現場、理想と現実、方針と職員の意識…。
計画通りに進まない現場で、CIO補佐官はどう伴走しているのか?
Vol.2のディスカッションを受けて、さらに“踏み込んだ実務の知恵”を共有する場となる予定です。ご参加お待ちしております!
▼詳細はこちら:
https://www.uluru.biz/news/15603