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2026/5/7

業界研究⑪林業の人手不足を考察します!【前編】~「オープンファクトブック#19」

みなさん、こんにちは。うるる執行役員CCO ブランド戦略・人事担当役員の小林です。私たちは「労働力不足解決のリーディングカンパニー」として、日本が抱える深刻な社会問題である労働力不足問題と日々向き合っています。その活動の一環として、当問題の実態や私たちの生活への影響について多くの方に知ってほしいと願い、「オープンファクトブック」を実施しています。ここでは労働力不足にまつわる実態、課題、展望などを解説していきます。

業種ごとに労働力不足を考察する本シリーズ。今回は、「林業」を取り上げます。

林野庁の資料によると、令和4年現在、日本の森林面積は約2502万ヘクタールに及びます。日本の国土は約3780万ヘクタールですから、おおよそ3分の2が森林に覆われていることになります。この割合は過去50年間、大きな変動なく維持されています。

この豊かな緑は、単なる風景ではありません。私たちの社会や生活を守る、重要な役割を担っており、林野庁のウェブサイトでは、このように紹介されています。

森林は、私たちに木材を供給してくれるだけでなく、二酸化炭素を吸収する、水を貯留し洪水を緩和する、土砂の流出を防ぐ、川や海へ養分を供給する、多様な生物を育む、風景や安らぎを与えるなど、さまざまな公益的機能を持っています。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/ken_sidou/forester/pdf/02_28_2bu.pdf

しかし、いま、この巨大な「自然のインフラ」の維持が危ぶまれています。

本オープンファクトブックでは、林業の現状と課題を踏まえながら、課題の解決に向けた先進的な取り組みを紹介します。なお、後編では、熊本県・小国町森林組合 参事 簗瀬和彦氏へのインタビューをお届けします。

資源はあるのに、担い手がいない――林業の現状

冒頭、森林面積について解説しましたが、森林の質量を測るもう一つの基準に「森林蓄積」があります。これは「樹木の幹の体積(立体的な資源量)」を指すものです。

森林面積はこの50年、ほぼ横ばいで推移していますが、森林蓄積は下記グラフのとおり、右肩上がりで増加し続けています。面積は変わらないのに体積が増えている――。これは、日本の山々がいま「パンパンに太った在庫」を抱えている状態であることを示しています。

1950年代から1970年代、戦後の復興需要に応えるべく国策として行われた「拡大造林」によって、多くのスギやヒノキが植えられました。苗木を植えてから木材として利用できるようになるまでには40〜50年ほどの期間を要しますが(※1)、当時の木々がいままさに「伐採適期」を迎え、巨大な蓄積量として表れているのです。

本来であれば、適切に伐採して利用し、再び植えるという「循環」が必要です。しかし、切らないまま放置すれば、生態系バランスの崩壊や、木の老齢化による二酸化炭素吸収量の低下、さらには根を張る力が弱まることによる土砂崩れや洪水リスクの増大を招きます。いわば、私たちの生活を支えるインフラが、メンテナンス不能な状態に陥っているのです。

しかし、当事者である林業事業者は、木を「切らない」のではなく、「切れない事情」を抱えています。

なぜ「切れない」のか。考えられる三つの要因

林業が抱える、木を切れない事情。そこには構造的な労働力不足が横たわっています。


1. 従事者の激減と高齢化

まず、担い手の推移を見ると、昭和55(1980)年には約14.6万人を数えた従事者は、令和2(2020)年には約4.4万人と、40年で3分の1以下に減少しました。また、全産業の高齢者(65歳以上)比率が約15%であるのに対し、林業は約25%と極めて高い水準にあります。

一方、35歳未満の若年者率は、2003年度から始まった就業支援「緑の雇用」事業の効果もあり、近年では全産業平均を上回る割合で推移しています。しかし、課題はその先にあります。


2. 「現場の過酷さ」と「将来不安」による離職

若年層の入職が増えている一方で、課題は「定着」にあります。

林業の3年後定着率は約70%前後(※2)と、全産業平均と比較しても決して低い数字ではありません。しかし、日本全体の労働力人口が減少するなか、従事者の大幅な増加を見込むことは難しく、新規就業者の獲得以上に、いかに「長く働き続けてもらうか」という定着支援の重要度が増しています。そのためには、「安全」と「待遇」という二つの壁を打ち破る必要があります。

【安全の壁】命に関わる現場の過酷さ

最大の要因は、依然として拭えない「現場の過酷さ」です。林野庁の資料(※3)によると、林業の労働災害発生率は、全産業平均の約10倍と突出した高さにあります。急峻な斜面での重労働に加え、チェンソーの操作ミスや重機の転落など、一歩間違えれば命に関わるリスクと常に隣り合わせです。「危険」「肉体労働」というイメージと実態が、若年層が将来を描く上での大きな障壁となっています。

【待遇の壁】専門技能に見合わない給与水準

また、将来への不安も無視できません。林業従事者の年間平均給与は約361万円(※3)と、全産業平均の約458万円と比較して低い水準に留まっています。

林業は、植栽から育成、そして数十年育てた大木の伐倒まで、極めて高度な技能を要する職人仕事です。その労働負荷や危険性の高さを考慮すると、現在の給与水準は十分とは言えません。

50年、100年という長い歳月をかけて木を育てる林業において、熟練者からの技術継承は産業維持の生命線です。しかし、退職者が入職者を上回る現状が技術継承の難しさを引き起こしており、結果として、「木を切れない(管理できない)」事態を生み出しているのです。


3. 「所有者不明」という経営以前の停滞

さらに、制度的な問題も追い打ちをかけています。相続の繰り返しにより、山の持ち主が分からなくなる「所有者不明森林」は33.4%に及んでいます。(※4)適切な整備を行いたくても、誰の許可を得ればいいか分からない。この「経営以前の停滞」が、日本中の山林で足かせとなっています。

新たな林業のカタチが拓く、山の可能性

この状況を打破するための動きも進んでいます。ここでは、人手不足を補うために行われている先進的な取り組みを紹介します。


1.テクノロジーの活用

人手不足の解消に向けては、テクノロジーの導入によって現場の負担を減らし、付加価値の高い業務に集中できる環境づくりが欠かせません。その一つの例が、精密林業計測株式会社(長野県)が展開する、ドローンとAIを活用した「森林計測サービス」です。(※5)

これは、調査員が急峻な斜面を歩き回り、一本ずつ木の太さを測っていた膨大な作業を、ドローン搭載の航空レーザー(照射したレーザーからの反射光をセンサーでとらえ、対象物までの距離や形状を正確に測定する3Dリモートセンシング技術)によるスキャンで代替するものであり、樹木一本ごとの位置、高さ、樹種を正確に把握できます。

従来の調査は、広大な面積をカバーするために膨大な月日と熟練の勘を必要としていましたが、このシステムによって調査が数日に短縮されるだけでなく、PC画面上で「どこに、どの程度の価値の木があるのか」を即座に可視化できるようになりました。経験の浅いスタッフでもデータに基づいた精緻な調査・計画策定を行え、技能継承の面でも大きなメリットをもたらしています。


2.人材の活用

担い手の裾野を広げるため、林業を「マルチワーカー」として柔軟に受け入れる自治体も出てきています。たとえば、鳥取県智頭町では、林業を専業にするハードルを下げるため、林業と町内の他の産業(農業、観光業、冬場の除雪作業など)を組み合わせた「半林半X(はんりんはんえっくす)」という働き方を町が公式にバックアップしています。(※6)


3.外国人材の受け入れ拡大

林業においては国も補助金や制度改革など、様々な面からバックアップを行っていますが、近年のトピックとして、「外国人材の受け入れ拡大」が挙げられます。

2024年より、一定の専門技能を持ち即戦力となる外国人を受け入れる「特定技能制度」の対象に林業分野を追加され、国境を越えた人材を本格的に迎え入れる土壌が整っています。(※7)また、「技能実習制度」の対象職種にも「林業(育林・素材生産作業)」が追加されています。これにより、外国人材の長期にわたるキャリア形成が見込まれています。


4.オペレーションの機械化による「スマート林業」の促進

このほか、ロボティクス技術を用いた過酷な現場作業の自動化による、安全性の向上と労働負荷の低減も進んでいます。たとえば、自動走行するフォワーダ(木材運搬車)や、遠隔操作による枝切りや伐採が可能なハーベスタ、ドローンを使った急斜面への苗木の運搬など、その技術は多岐にわたります。各自治体では、こうした機械の導入補助に加え、これらを操作するオペレーターの育成研修にも力を入れています。


5.六次産業の推進による新たな収益源の確保

上述のとおり、林業が抱える課題には「賃金の低さ」という切実な問題があります。この課題に対し、単に木を売るだけでなく、加工・販売まで一貫して手がける「六次産業化」によって収益性を高め、従事者の待遇改善につなげている事例が増えています。

たとえば、株式会社エーゼログループ(岡山県)が営む、「西粟倉森の学校」では、伐採した木材を自社工場で加工し、DIY用のフローリング材として、ECサイトで生活者に直接販売するほか、木材利用できない樹皮を培土にいちごの栽培を行い、新たな収益を生み出しています。さらには、このようにして培ったノウハウを活用したコンサルティング業も営んでおり、「木」を軸にビジネスの幅を広げることで、持続可能な賃金体系の確立を目指しています。(※9)

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ここまで、日本の林業が抱える構造的な課題と、変化の兆しについて概観してきました。資源が成熟し、活用の好機を迎えている今、現場ではどのような変革が求められているのでしょうか。

後編では、その具体的な答えを探るべく、熊本県・小国町森林組合参事 簗瀬和彦氏に行ったインタビューをお届けします。

40年にわたり現場と経営の最前線に立ち続け、「小国杉」を全国区のブランドへと押し上げてきた簗瀬氏。その言葉から、人手不足を乗り越え、持続可能な林業を実現するための考察と実践を探ります。

後編、のインタビュー記事はこちら
https://blog.uluru.biz/11936

■参考・出典

※1 森林の育て方、木材生産:九州森林管理局
https://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/invitation/q_a/rkuma10b.html

※2 経済産業省資料「林業労働力の確保の促進に関する基本方針の変更について(令和4年5月18日)」P.10
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000939917.pdf

※3  一目でわかる林業労働(データ編)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/routai/doukou/attach/pdf/index-6.pdf

※4 林野庁資料「森林・林業・木材産業の現状と課題 令和8年4月」P.17
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/genjo_kadai/attach/pdf/index-328.pdf

※5 精密林業計測株式会社
https://www.prefore.org/

※6 智頭町複業協同組合
https://chizu-w.jp

※7 林野庁「令和6年度森林及び林業の動向」P.112
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/old-hakusho-search/wp-2-R06-ringyo-hakusho.pdf

※8 林野庁「スマート林業技術等を活用した 生産性向上・省力化の推進 令和7年11月」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/attach/pdf/1120-4.pdf

※9 西粟倉森の学校
https://morinogakko.jp/

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