VISION
2024/12/23

今年の“いい入札の日”は「スタートアップの公共入札参加」をテーマにしたオフラインイベントを開催!【レポートブログ】

みなさん、こんにちは。ブランド戦略部の高橋(@fjmtkm710)です。

2025年も残りわずかとなりましたね。

ところで今年はもう過ぎてしまいましたが、11月23日は何の日かご存知でしょうか?

そう、「いい(11)入札(23)の日」なのです!

この「いい入札の日」は、より多くの方に入札市場への理解を深めていただくとともに、主な財源が税金によってまかなわれる入札が私たちの生活をより豊かにするものであるという認知拡大の機会として、うるるの入札情報速報サービス「NJSS」の 10 周年を迎えた 2018年に制定された記念日です。

▼制定時のブログはこちら

制定以来さまざまな広報施策を展開してきましたが、 6 年目を迎える今回は、「スタートアップの公共入札参加」をテーマとしたオフラインイベント「スタートアップの力で、よりよい未来を~いい入札の日 2024~」を開催いたしました。

▼イベント詳細はこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000287.000049287.html

今回のうるログではそのイベント当日の様子をお届けします!

開会挨拶~イベント実施背景~

開会挨拶では、うるるの取締役CCOである小林が、「いい入札の日」の制定背景やこれまでの取り組み、そして今回「スタートアップの公共入札参加」をテーマに掲げた理由について語りました。

今回「スタートアップの公共入札参加」をテーマに掲げた背景には、以下の2つの政府の方針があります。

1.デジタル行財政改革 とりまとめ2024
内閣官房が推進するデジタル行財政改革では、人口減少社会において、公共サービスを維持し、社会変革と価値創造を促すことを目指すデジタル行財政改革の理念に基づけば、自治体や既存の企業等に加え、スタートアップのアイディア・機動力が不可欠とされている

2.スタートアップ育成5か年計画
第二の創業ブームを目指す「スタートアップ育成5か年計画」の中で、資金供給の強化や出口戦略の多様化が掲げられており、その中でも「公共調達の活用」がスタートアップ育成の重要な手段とされている

このように政府が「スタートアップの公共入札参加」を促進する一方で、「NJSS」としてはスタートアップが実際に入札に参加するには多くの課題があると感じていました。

そこで、「スタートアップの公共入札参加における課題」について官民での対話を通じて深堀るとともに、より多くのスタートアップが入札に参加する機会を創出すべく、今回「いい入札の日」にこのテーマを掲げたイベントを実施することにしました。

基調講演「公共入札市場の最新動向とスタートアップにおける入札参加の現状

開会挨拶の後は、基調講演です。

「公共入札市場の最新動向とスタートアップにおける入札参加の現状」をテーマに、うるるのNJSS事業本部カスタマーサクセス部およびGovtech事業本部および調達インフォ事業部 部長の北澤 雄太が、NJSSが収集した案件データをベースに分析した公共入札市場の動向やトレンド、またスタートアップの入札参加状況を詳しく解説しました。

公共入札においては、官公需法に基づいて中小企業の受注機会拡大が図られていることから、中小企業の落札率が高い実態があります。一方で、日本全国にある約365万社の中で入札参加経験のある企業は11%であること、また、公共入札におけるスタートアップを含む創業10年未満の中小企業からの受注比率は約1%にとどまっている現状をお伝えしました。

政府がデジタル行財政改革やスタートアップ育成5か年計画などを通じて、その受注比率を3%に引き上げようとしていますが、その目標を達成するには「まずスタートアップの公共入札参加メリットを正しく認知・理解していただく必要がある」と述べました。

パネルディスカッション「官民で探る、スタートアップの公共入札参加のカギとは?」

続いて本イベントのメインコンテンツでもあるパネルディスカッションでは、行政とスタートアップの連携強化や成長支援などを行う公的機関と、今後自治体との取り組みおよび連携強化を目指すスタートアップの代表者に登壇いただきました。

公共入札を通じてスタートアップがどのように社会課題の解決に貢献し、企業として成長を実現できるか、公的機関とスタートアップそれぞれの視点からディスカッションを行いました。モデレータは、うるるの公的機関向け調達購買サービス「調達インフォ」のサービス販売責任者である安蘇が務めました。

テーマ1:スタートアップの入札参加率および今後の参加意向に関する実態調査の結果に対して

「NJSS」が行った「スタートアップ企業の公共入札に関する実態調査」では、7割を超えるスタートアップが入札参加未経験であり、また未経験者ほど今後の参加意向も低いという結果が明らかになりました。

まずその結果に対して、内閣官房のデジタル行財政改革会議事務局 参事官補佐の鈴木氏は「3割が参加経験があるということになるが、意外と多いなという印象。そこから受注比率が1%と少なくなってしまう原因と向き合う必要がある」と見解を語りました。

また長年、スタートアップとの連携を強化すべくさまざまな施策を展開してきた浜松市の宮野氏は「一度、入札を経験してプロポーザル作成に慣れることで、自治体ごとに共通する課題を見出しやすくなるはず。特に、日本全国の約1,800自治体が抱える課題には類似点が多く、1つの自治体での入札参加体験が他の自治体への提案につながる可能性がある」と、一度でも入札に参加することの重要性を語りました。

一方、入札参加経験のある株式会社CEspaceの代表取締役社長 若泉氏は、

「市役所からの問い合わせをきっかけに自治体との取り組みを始めたが、正直、それがなければ書類提出や資格取得などの手間が多く、入札には参加しなかったと思う。ただ、現状の数字を見ると競合が少ないとも言え、ブルーオーシャンの市場とも捉えられる。」と言いました。

また今後自治体との取り組みを拡大したいと考えている家庭料理の宅配サービス「つくりおき.jp」を展開する株式会社AntwayのCEO 前島氏は「必ずしも落札されるわけではないものに対して、ただでさえ限られている人的リソースや時間をどう割けばよいのか怖さがある」と、入札参加に対するリアルな課題感をシェアしました。

テーマ2:スタートアップの入札参加を広げるための手立てとは?

NJSSが実施した調査では、スタートアップが入札に参加しない理由として「自社と無縁と思っている」との回答が半数を超えることが明らかになりました。これを受け、鈴木氏は、スタートアップの入札参加を広げるために、国が進めている経済産業省の「行政との連携実績のあるスタートアップ100選」の制作と公開、内閣府や総務省における「入札参加資格の簡素化」などの取り組みを紹介しました。

また、「行政との連携を深めるため、内閣官房デジタル行財政改革にて本年7月より開催している「国・地方スタートアップ連携実務者会議」といった場を通じて現場の声を拾うことを大切にしている」と述べ、現場との接点強化の必要性を強調しました。さらに、「制度を作るだけでなく、既存の仕組みを有効に活用する両輪のアプローチが必要」と課題についても言及しました。

他方、スタートアップ側としては公的機関との接点を作るのが難しいという声も多くあります。それに対し若泉氏は「正直に入札について知らないことを伝えると、役所の方は親切に教えてくれる」と述べ、「地道ではあるがスタートアップ自ら公的機関側にドアノックをし、自ら接点を作ることがファーストステップとして重要になる」と語りました。また公的機関の担当者の異動もチャンスととらえ、異動先にも足を運んだり、挨拶をしたりと、地道に関係性を続けていくことが、公的機関との取り組みを広げる鍵になるとコメントしました。

テーマ3:スタートアップと公的機関の取り組みを加速するには

これまでの議論を踏まえ、鈴木氏はスタートアップと行政機関の取り組みを加速するには、「いきなり大きな調達を目指すのではなく、『スモールスタート』がカギである」と強調しました。まずは行政機関と接点を持ち、担当者をうまく活用すること、公共調達時におけるスタートアップのアイディア・ノウハウをはじめとした知財保護の在り方を再認識することで円滑に取り組みを進めることにつながると熱意を込めて語りました。

また、宮野氏は「小さな相談を早い段階から行うことが大切」と話します。自社のやりたいことを一方的に伝えるのではなく、解決したい社会課題や根拠となるデータをもとに相談を行うことで、入札開始時に有利なスタートを切ることができると具体的なアプローチ方法を提案しました。

一方で、民間企業の視点から若泉氏は、「公的機関と取り組むことのメリットがあるかを明確に認識しておくことがまず重要」といいます。スタートアップは実際のところ、社会課題解決に取り組む前に、売上の向上や資金調達、採用といった足元にある業務課題に向き合わなければなりません。そのあたりを考慮しつつ、「入札を何の目的でどう活用するかを明確にすること、またスタートアップ同士で情報共有を図ることが有益である」と語りました。

さらに、前島氏は「官と民の間に立つ企業やサービスの活用がカギ」とコメントしました。実際に前島氏は公的機関へのアプローチには高いハードルがあると感じている中で、中間事業者が提供するサービスを活用することで効率的に自治体へアプローチできており、官民間の橋渡しを担う企業を増やしていくことも重要と訴えました。

総括:

今回のパネルディスカッションでは、スタートアップが公共入札市場に参加するための課題と参加拡大のカギについて、多角的な視点からの意見が交わされました。

今後、スタートアップと公的機関双方における情報格差の解消、関係構築の強化、中間支援組織の活用、成功事例の情報共有など、様々な取り組みを通じて、より多くのスタートアップが公的機関と連携し、社会課題の解決や新たな価値の創造に貢献していくことが期待されます。

官民でつながるネットワーキング

イベントの終盤にはネットワーキングが行われ、登壇者4名に加え、うるるのNJSSやGovtech事業のメンバーも加わり、参加者と交流を深めました。

参加者の中には、今後入札参加を検討しているスタートアップも多く、基調講演やパネルディスカッション、ネットワーキングを通じて参加意向が高まったという声が寄せられました。

編集後記

今回のイベントを企画するにあたり、公的機関側でスタートアップとの連携強化に尽力されている方々と何度もお話しする機会をいただきました。ユニークでバイタリティあふれる方々が、公共入札へのスタートアップ参加や社会課題の解決に向けて日々奮闘されている姿に触れ、公的機関側の声や想いをスタートアップに届けること、またスタートアップが抱える課題を公的機関側に伝えることが、私たちの重要な役割だと改めて感じました。

引き続きスタートアップによる公共入札の拡大に向けて支援を行っていきたいと考えておりますし、「いい入札の日」の取り組みにとどまらず、官と民の架け橋となる活動を続けてまいります。

最後に、本イベントにご協力いただいた内閣官房デジタル行財政改革会議事務局 参事官補佐の鈴木さま、浜松市産業部スタートアップ推進課の宮野さま、CEspaceの若泉さま、Antwayの前島さまをはじめ、関係者の皆さまに深く感謝申し上げます。また、ご来場いただいた皆さまにも心より御礼申し上げます。

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