労働力不足問題が起こる要因と未来への影響「オープンファクトブック#2」
みなさん、こんにちは。うるる取締役 ブランド戦略部長の小林です。
私たちは「労働力不足解決のリーディングカンパニー」として、日本が抱える深刻な社会問題である労働力不足問題と日々向き合っています。
その活動の一環として、当問題の実態や私たちの生活への影響について多くの方に知ってほしいと願い、「オープンファクトブック」を実施しています。このオープンファクトブックでは労働力不足にまつわる実態、課題、展望などを解説していきます。
第2回のテーマは「労働力不足問題が起こる要因と未来への影響」についてです。
日本を取り巻く労働力不足問題がなぜ起こり、それが続くと未来にどのような影響があるかについてお伝えして参ります。
目次
労働力不足問題が起こる要因
まず労働力不足問題が起こる要因について深ぼっていきたいと思います。
今後日本の総人口減少が継続する見込みとなっており、それに伴い主な働き手である15歳~64歳の生産労働人口が減っていきます。つまり、人口減少が労働力不足問題の中心にある要因となっています。
※人口減少については第一回目の労働力不足問題に関するオープンファクトブックをご覧ください。
さて、人口減少の裏には何があるのでしょうか?
少子化
人口減少の直接的な要因が「少子化」です。生まれてくる子どもの数が少なければ当然人口も増えていきません。
総務省が発表した数値によると(※1)、15歳未満の子どもの推計人口(2022年4月1日現在)は、前年より25万人少ない1465万人であり、41年連続の減少が続いているとのこと。これにより、比較可能な1950年以降で過去最少を更新し、改めて少子化が進んでいることが裏付けられました。
出典:時事ドットコムニュース
少子化の背景には何があるのでしょう?
まずは出生数及び合計特殊出生率の減少があげられます。
言葉の定義(※2)
「出生数」:その年に生まれたこどもの数を指します
「合計特殊出生率」:15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの
出生数は1970年代前半の第2次ベビーブームの200万人に対して、昨今では半分以下の87万人、さらに2040年には74万人まで落ち込むことが予想されています。(※3)
出典:厚生労働省「厚生労働白書 令和2年版」
出生数及び合計特殊出生率が減っている要因を見ていきましょう。
まず挙げられるのが、晩婚化に伴う晩産化です。
平均初婚年齢は以下の通りの変化となっています。(※4)
<平均初婚年齢の変化>
夫28.2歳・妻25.5歳(1985年)
↓
夫31.0歳・妻29.4歳(2020年)
晩婚化に伴い、出産時の母親の平均年齢も高くなるという晩産化の傾向があらわれています。2020年の母親の出産時の平均年齢は第1子30.7歳、第2子32.8歳、第3子33.9歳となっています。(尚、晩婚化が日本が世界の中で異常に進んでいるかというとそうではなく、例えば欧州には日本よりも初婚年齢が高い国は複数存在します)
<第一子出産時の母親年齢の変化>
26.7歳(1985年)
↓
30.7歳(2020年)
1985年と比較すると、第1子で4.0歳高くなっています。
また、第2子では3.7歳、第3子では2.5歳高くなっていることがわかります。35歳以降は出産が減少することから、晩婚化が招く晩産化は少子化の原因となっています。
出典:厚生労働省「人口動態統計(確定数)」
また晩婚化・晩産化以外にも子ども1人あたりの子育てコストの増加も要因となっています。以下図の通り、1970年の2.4万円が、2017年には37.1万円となり、約16倍に跳ね上がっていることがわかります。(※5)
出典:総務省「家計調査」「人口推計」「住民基本台帳」
さらにここまで挙げてきた要因には「仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れや高学歴化」、「結婚・出産に対する価値観の変化」、「経済的不安定の増大等」など、様々な要因も絡んでおり、少子化には複合的な問題が絡み合っていると言えます。
高齢化
人口減少と切っても切り離せないのが、「高齢化」です。
内閣府発表のデータによると日本の総人口は、令和2年10月1日現在、1億2,571万人で、65歳以上人口は3,619万人となり総人口に占める割合(高齢化率)は28.8%となりました。(※6)
65歳以上人口のうち、「65~74歳人口」は1,747万人(男性835万人、女性912万人)で総人口に占める割合は13.9%。
また、「75歳以上人口」は1,872万人(男性739万人、女性1,134万人)で、総人口に占める割合は14.9%、65~74歳人口を上回っていることもわかります。
出典:内閣府「令和3年 高齢化社会白書」
さて、この高齢化社会にはどのような要因があるのでしょうか?
まず挙げられるのが平均寿命の伸長です。
以下図のように、日本の平均寿命は、平成30(2018)年現在、男性81.25年、女性87.32年であり、今後、男女とも平均寿命は延びて、令和47(2065)年には、男性84.95年、女性91.35年となり、女性は90年を超えると見込まれてます。
出典:内閣府「令和3年 高齢化社会白書」
そして子どもの数が増えない中、65歳以上人口の増大により死亡数は増加し、死亡率(人口1,000人当たりの死亡数)は上昇を続け、令和47(2065)年には17.7になると推計されています。
出典:内閣府「令和3年 高齢化社会白書」
つまり、出生数が減り続け、それに伴って15-64歳の生産年齢人口が減り、結果的に労働力人口が減っていきます。
また出生数が減り続ける中で、65歳以上の人口が増え続けるに伴い、死亡者数が常に出生数を上回り、結果的に人口が減り続ける。
このようなメカニズムの真っ只中に日本がある、ということになります。
労働力不足問題の未来への影響
パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」(※7)によると、2030年には、7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、「644万人の人手不足」となることが分かりました。
産業別において、特に大きな不足が予測されるのは、サービス業、医療・福祉業など、現在も人手不足に苦しむ業種であることが分かりました。これらの業種は、少子高齢化やサービス産業化の進展により今後も大きな需要の伸びが予測され、労働供給の伸びがそれに追いつかないと考えられます。
出典:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
さて、労働力不足は未来にどのような影響を及ぼすことになるでしょうか。
経済規模の縮小(※8)
経済活動はその担い手である労働力人口に左右されるので、これから急加速していく労働力人口の減少は経済活動に大きな打撃を与えていくでしょう。高度成長期において、生産性が上昇していくだけでなく、労働力人口が増加することによって成長率が高まっていく状態の反対の状態がこれから起こるということです。
また、総人口に占める労働力人口の割合は、2014年約52%から2060年には約44%に低下することから、働く人よりも支えられる人が多くなります。
また、急速な人口減少が、国内市場の縮小をもたらすと、投資先としての魅力を低下させ、更に人々の集積や交流を通じたイノベーションを生じにくくさせることによって、成長力が低下していきます。
加えて、労働力不足を補うために長時間労働が深刻化し、ワーク・ライフ・バランスも改善されず、少子化がさらに進行していくという悪循環が生ずる恐れもあります。
こうした人口急減・超高齢化による経済へのマイナスの負荷が需要面、供給面の両面で働き合って、マイナスの相乗効果を発揮し、一旦経済規模の縮小が始まると、それが更なる縮小を招くという「縮小スパイラル」に陥るおそれがあります。
「縮小スパイラル」が強く作用する場合には、国民負担の増大が経済の成長を上回り、実際の国民生活の質や水準を表す一人当たりの実質消費水準が低下し、国民一人一人の豊かさが低下するような事態を招きかねません。
出典:内閣府「選択する未来委員会」
また厚生労働白書(※9)によると、労働力不足が会社経営に影響を及ぼしている企業は全体の7割を超えており、多くは既存事業の運営への支障など「会社にとって悪い影響」であるとのことです。
さらには「技術・ノウハウの伝承の困難化」や「余力以上の人件費の高騰」などもあげられており、今後益々こういった事象に拍車がかかることは間違いないでしょう。
一方、ポジティブな側面も
労働力不足問題は上述の通りネガティブな影響しか生み出さないのでしょうか?これをきっかけにポジティブな動きが生まれていることも事実としてあります。
例えば厚生労働省によると、人手不足自体が抜本的な業務プロセスの見直しの推進など「会社にとって良い影響」を及ぼしていると回答している企業もあるとのこと。
また経団連主催の座談会(※10)でも、人口減少自体を好機に変えることが重要であると対話されており、働き方改革の推進や生産性向上への注目、また多様な人材が活躍できる環境整備などに力を入れ始める良いきっかけになるとされています。
労働力不足と対峙することで、従来顕在化しなかった課題が浮き彫りとなっています。これらの課題を乗り越えようと、企業も個人も努力し続けるプロセス自体がチャンスなのではないかと、私個人的には思っております。
いかがでしたでしょうか?
労働力不足問題を放置しておくと基本的にはネガティブな未来が待ち受ける。一方でここに対峙し様々な対策を重ねることでポジティブな未来を私たちの手で作り上げられるともいえるでしょう。
私たちの生活には関係ないと思われがちの労働力不足問題ですが、少しでも身近に感じていただけたら幸いです。
次回のオープンファクトブックでは、労働力不足問題に対する対策についてご紹介します。
本記事まとめ
- 労働力不足問題が起こる直接的な要因は人口減少であり、人口減少の直接要因の一つが少子化である
- 15歳未満の子どもの数は41年連続で減少を続けている
- 少子化は出生数の減少で起こり、出生数は晩産化をはじめとした複雑な要因が絡み合う
- 人口減少のもう一つの要因は高齢化であり、令和2年現在高齢化率は28.8%である
- 出生数が減り続ける中で、65歳以上の人口が増え続けるに伴い、死亡者数が常に出生数を上回り、結果的に人口が減り続ける
- 2030年には633万人の労働力不足となることが予測されている
- 労働力不足は経済規模の縮小を始めとした様々な深刻な影響をもたらすとされている一方で、抜本的な業務プロセスの見直しや働き方改革の推進など、今まで顕在化されてこなかった重要課題と対峙する機会ともなる
■参考・出典
※1 時事通信社「子どもの人口、41年連続減 1465万人で最少更新―総務省」(2022年)
※2 厚生労働省「人口動態調査」(2011年)
※3 厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」(2020年)
※4 公益財団法人生命保険文化センター「ライフイベントから見る生活設計
」(2020年)
※5 参議院「経済のプリズムコラム」(2018年)
※6 内閣府「令和3年版 高齢社会白書」(2021年)
※7 パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」(2020年)
※8 内閣府「選択する未来委員会」(2015)
※9 厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」
※10 一般社団法人 日本経済団体連合会「人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上」(2017年)
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