業界研究⑩地方自治体の人手不足を考察します!~「オープンファクトブック#18」
みなさん、こんにちは。うるる執行役員 ブランド戦略部長の小林です。私たちは「労働力不足解決のリーディングカンパニー」として、日本が抱える深刻な社会問題である労働力不足問題と日々向き合っています。その活動の一環として、当問題の実態や私たちの生活への影響について多くの方に知ってほしいと願い、「オープンファクトブック」を実施しています。ここでは労働力不足にまつわる実態、課題、展望などを解説していきます。
業種ごとに労働力不足を考察する本シリーズ。今回は、「地方自治体」を取り上げます。
かつて地方自治体は、民間企業に比べて「安定」した職業の代名詞とされてきました。しかし、現代においては、あらゆるところが深刻な人手不足に陥っています。その背景には何があるのでしょうか。そして、どのような対策が進んでいるのでしょうか。本オープンファクトブックでつまびらかにしていきたいと思います。
なお、後半では、官民連携支援事業を営むカントミント株式会社 取締役CFO 蓑島智大氏に行ったインタビューをお届けします。
目次
自治体を襲う「静かなる危機」の正体
まずは、自治体の実態を押さえておきましょう。2025(令和7)年現在、地方公共団体の職員は280万 9,298人とされています。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000608426.pdf
また、職員数は 1994(平成6)年をピークに減少しているものの、2017(平成29)年以降は微増から横ばいの傾向が続いています。その背景には、業務のデジタル化、防災・減災対策、災害復旧、子ども子育て支援や生活保護関連業務への対応など、多様化する業務への対応をはじめ、2023(令和5)年度から始まった「定年延長」という制度的な要因が挙げられます。
続いて、採用に目を向けてみます。総務省「地方公務員における働き方改革に係る状況ー令和6年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果の概要-」によると、自治体職員の採用試験倍率はこの 10年低下傾向にあり、2015(平成27年)度に6.6 倍あった平均倍率は、2024(令和6)年度では4.1倍まで低下しています。(※1)
これを専門職単位で見ると、より深刻な現状が垣間見られます。たとえば、昨年8月、人事院は国家公務員一般職試験(大卒程度)の合格者数を公表しましたが、機械や土木といった「技術系」の合格者は、定員割れが起きています(※2)。この現象は地方自治体でも見られ、たとえば、東京特別区(※3)・名古屋市(※4、5)・大阪市(※6)における 2025年度の技術系の採用予定数と最終合格者数は下記のとおりであり、大都市でさえ定員割れが発生しています。

技術職は分母となる受験者が圧倒的に足りず、競争がほぼない状態の自治体が多いのが実状です。なお、辞退者が出ることを見越し、合格者は予定数よりも多く出すことが慣例のため、実際の入職者は合格者数を下回っていると考えてよいでしょう。
他方、日本の人口減少が進むなか、水道管などのインフラの老朽化への対応や高齢者福祉のニーズがこれからピークを迎えることを加味すると、職員一人あたりの業務負荷は今後、指数関数的に増加することが推測でき、現状の延長線上のままでは、自治体の機能維持は難しくなっていくことが予測できます。
なぜ自治体で人手不足が加速するのか
こうした「採用倍率の低下」や「技術職の定員割れ」という事態は、一時的な就職人気の変動ではありません。なぜ、これほどまでに自治体は選ばれにくくなってしまったのか。その背景には、「労働市場の激変」「働き方の硬直性」といった構造的要因が複雑に絡み合っていることが分かります。
1.民間企業との競争激化
公務員の給与は、人事院勧告に基づき民間に準拠する形で決定されますが、そこには大きな乖離があり、志願者の減少や若手の離職を引き起こしています。たとえば、株式会社キャリタスが行った調査では、「就職先企業を選ぶ際に重視する点」として「給与・待遇が良い」の項目が最も高いポイントを占めています。(※7)
近年は、ファーストリテイリングやオープンハウス、ゼンショーホールディングスなど初任給を大幅に引き上げる企業が多くあり、給与体系が固定的な自治体は競り負け、相対的な魅力の低下を招いています。
また、民間企業が春先に内定を出すのに対し、公務員試験は夏から秋にかけて行われることから、学生の間で「早く就活を終えたい」という心理が働き、受験者の減少につながっていることが考えられています。実際、公務員試験の多くが実施される6月時点での大学生の就職内定率は81.6%(※8)に及んでいます。
2.若手職員の離職率上昇
公務員の人手不足は内部からも起きています。総務省の資料によると、一般行政職における 30 歳未満の自己都合退職者数は、2013(平成25)年度の1,564 人から、2024(令和6)年度は5,010 人と、11年間で3.2倍に急増しています。30代の離職者も4.3倍(1,327人→5,681人)と高く、若手・中堅層の流出が加速しているといえそうです。以前は「定年まで勤める」のが当たり前だった自治体ですが、いまや自己都合の退職者の約5割が30 代以下となっています。(※9)(※10)
若年層が退職を選択する理由として、どのようなことが考えられるのでしょうか。上記資料では、(1)災害対応や多様化する住民ニーズによる「業務範囲の拡大」、(2)自治体に処理が委ねられている「法定受託事務」をはじめ、多種多様な幅広い業務を限られた人員で遂行する負担(外部委託できない、競業他社が出現しない)、(3)デジタル化の遅れによる、非効率な業務プロセスへの不満(紙の起案、何重ものハンコ、無意味な会議)、(4)思い描いていた働き方と現実とのギャップ、(5)カスタマーハラスメントの経験ーーなどが挙げられています。なかでも、(2)は国から委託された事務(戸籍、マイナンバー、生活保護など)を拒否できず、かつ正確性が求められるため、クリエイティブな改善よりも「ミスをしないための膨大な確認作業」にリソースを割かざるを得ないといえるでしょう。
なお、内閣人事局の資料(令和6年)では、数年以内に離職意向を持つ職員のその要因が紹介されています。こちらは国家公務員を対象としたものですが、参考までに30歳未満・30代の要因上位三つを紹介します。

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/20250624_siryou.pdf
このデータからは、キャリア形成の不自由さが、若年層の感じる最大のリスクになっていることがうかがえます。
冒頭、「定年延長で自治体職員数は横ばい」というデータを示しましたが、本章の情報と合わせると「ベテランは残るが、未来を担う若手・中堅が抜けていく」という、組織の高齢化・空洞化が急激に進んでいる実態が見えてきます。
転職が当たり前のこの世代にとって、「セカンドキャリアを描けなくなる」という焦燥感が、退職に踏み切るまたは検討するトリガーになっている、といえそうです。
当事者だけで頑張らない構造への転換
以上のように、現代の自治体職員、とくに若手・中堅層は「公務員という肩書き」だけでは引き留めることは難しくなっています。しかし、国や各自治体もこの現状を前に、手をこまねいているわけではありません。自治体が再び選ばれる仕事になるためには、どのような構造改革が必要なのでしょうか。
ここでは、すでに取組が行われている三つの事例を紹介しつつ、その糸口を探ってみたいと思います。
1. 採用の常識をアップデートする
各自治体は優秀な人材の確保に向け、試験の仕組みそのものを変えています。たとえば、すでに多くの自治体が「早期選考」「早期枠」「春試験」の名目で、民間と同時期に試験と合格発表を行っているほか、東京都や徳島県、北九州市などは大学3年生が受験できる「秋採用」を新たに設けています。この一環として、横浜市では2025年度から一部の技術系の採用に対し、筆記試験に替えて書類選考を行う「大学推薦枠」を設ける(※11)など、独自の施策を講じています。
キャリア採用に関しても、多くの自治体は年に1度の実施に対し、北海道中頓別町や神戸市、山口県宇部市では、通年実施(通年受付)を行っています。なかでも、中頓別町は受付期間を「採用予定者数に達するまで。」と明記するほどです。(※12)年間を通じていつでも応募できる仕組みを導入することで、自治体には転職潜在層を逃さないメリットが、転職者には民間企業を受ける感覚で挑戦できるメリットがあるといえるでしょう。
2.働き方の自由度を高める
千葉県や大阪府、奈良県ですでに導入されているのが、「選択的週休3日制」です。これは1日の勤務時間を延ばす代わりに週3日休める制度です。もちろん給与は変わりません。人材確保やワークライフバランスの向上、育児や介護と仕事の両立支援を主な目的としており、最近では東京都が2025(令和7年)度からの導入を決めたことで話題になりました。
このほかにも、テレワークの導入(佐賀県など)(※13)や副業を認めているケース(奈良県生駒市など)(※14)をはじめ、働き方の自由度を高める取組が見られています。さらに近年は、システム開発や広報、SNS運用など特定のスキルを持つ民間人と自治体をつなぐ「複業公務員」の登用が各自治体で進んでいます。民間人は地域貢献の文脈で自分の力を役立てながら報酬を得ることができ、自治体にとっては組織に新しい風を取り込むことで職員が外部の視点を学び、新たなスキルを取得する機会につながっています。
3.テクノロジーによる業務の引き算
テクノロジーの導入も各自治体で積極的に行われている一つです。ここでは、いくつかの事例を紹介します。
・北海道北見市「ICT を活用したスマート窓口」
住民のマイナンバーカードに基づき、職員がシステムで申請書を作成する取組です。住民は内容を確認して署名するだけで済むため待ち時間の短縮に、職員はデータ入力作業の省略、入力ミスの防止につながっています。(※15)
・福岡市「LINE の活用」
福岡市は政令指定都市で初めてLINE公式アカウントを開設。以来、「粗大ごみ収集の申請」「避難所のリアルタイム確認」「ごみの日通知」「道路・公園の不具合の通報」など、市民に対してさまざまな利便性を発揮しています。これにより、職員は本来やるべき高度な業務に集中できる環境が整い、業務の質が向上しています。(※16)
・千葉県君津市「ドローンを活用したインフラ点検」
橋梁や下水道など、現在、多くの自治体がインフラ点検にドローンを活用しています。その先駆けとなったのが君津市であり、『君津モデル』として全国に広がりました。
専門業者に外注せず職員自らが操縦・診断を行うことで大幅なコストカットを実現し、人間が足場を組んで点検するよりも時間がかからず、安全に高精度のデータが取得できます。また、道路の通行止めが起こらないため、住民の利便性を損なうこともありません。(※17)
このほかにも、予約があったときに最適なルートをAIが計算して走る「オンデマンド交通」の導入、「電子契約書」の導入によるコストの削減、AIによる議会の回答案の作成など、さまざまな自治体でテクノロジーの活用が進んでいます。
地方自治体の人手不足~カントミント株式会社 取締役 蓑島 智大氏に訊く
ここからは、官民連携支援事業を営むカントミント株式会社(https://kantominto.com/) 取締役 CFO 蓑島智大氏に「地方自治体の人手不足」をテーマに行ったインタビューをお届けします。

蓑島智大氏プロフィール
大学卒業後、民間企業を経て札幌市役所に入庁。
以来、生活保護、市営交通の経営計画、財務管理、政策企画、産業振興、自治体DX、スマートシティ政策などに従事。途中、経済産業省への出向を経験。
2025年4月、札幌市役所のOB2名とともにカントミント株式会社を創業し、取締役CFO に就任。現在は、20年にわたる行政職員としての多彩な経験をもとに、公民連携支援、自治体事業の運営支援、自治体職員を対象とした人材育成支援を通じ、地方自治体の活性化に取り組んでいる。
ーー今回のオープンファクトブックを、お読みになった感想を聞かせてください。
全体を通して、自治体が直面している人手不足の現状が解像度高く描かれていると感じました。特に若手公務員の離職が深刻化している点は、まさに私たちが現場で日々感じていた課題そのものです。
ここで少し補足させていただくと、自治体の公務員数が減少してきた背景には、2000年代に行われた「構造改革」があります。当時は「小さな政府」を目指し、毎年職員数を減らす政策が取られてきました。近年、ようやく人手を増やそうという動きに転じてはいますが、若手の採用に苦戦する自治体が多く、団塊世代の大量退職と相まって、これから 5 年後くらいには、公務員数は再び急激な減少に転じるのではないかと危惧しています。
自治体という組織は、よくも悪くも「硬直的」です。近年は、硬直的であるが故に、時代の変化についていけないようになってきており、業務フローは時代が変わっても旧来のまま引き継がれ、基幹システムに至っては 2000年前後に構築されたものを、四半世紀近くアップデートできないまま使い続けているのが実態です。このアナログな体制の限界が露呈したのが、2020年から2022年にかけての新型コロナウイルス感染症の時期でした。
対面接触が制限されるなか、デジタル対応の遅れが連日のようにメディアで指摘され、ようやく国から「自治体DX」の通達が出されました。しかし、現実は過酷です。急速な高齢化への対応で高齢保健福祉分野の業務は煩雑を極めるとともに、こども家庭庁が創設され、子育て領域でも新しい制度が次々と生まれています。恐ろしいのは、新しい仕事が増えても現行の制度が簡単には廃止できない点です。業務は積み上がる一方で、複雑化は止まりません。
さらに財政面でも、医療費や介護保険といった「義務的な経費」が急増しています。税収も増加はしていますが、業務を大幅に削減できないとなると、義務的な費用を捻出すべく人件費を削るしかなく、もはやこれまでのやり方では経営をカバーできない段階に来ています。
ーー外から見ると「もっと効率化できるのでは?」と思われがちな自治体業務ですが、実情はどうなのでしょうか。
自治体職員の多くは、厳しい試験を突破してきた優秀な方々であり、「地域を良くしたい」という強い使命感を持って入庁しています。しかし、その能力を活かしきれない構造的な障壁もあります。
まず、自治体の業務の多くは法律と条例に縛られています。たとえば住民票の発行一つにしても、複雑な審査フローを経て、厳格な法的根拠のもとに住民の手元に届いています。職員の意思だけでは簡単に変えられない業務が多いという現実もあります。
自治体DXの文脈で、AIや最新のソリューションが注目されますが、どんなに便利なツールであっても、自治体側の根幹にある法律等や業務フローを変えていかなければ、決してフィットしません。たとえば、「引越しの時に役所に行かなくて済めば便利なのに」と思いますが、法律等に「対面で」と書かれていると叶いません。プロダクトを入れる前に法律等を変える必要があります。
国や自治体では、このような「アナログ規制」の撤廃も進めていますが、業務に影響する法律等の文言が膨大にあり、DXの効果として現れるところまでは届いていません。この自治体業務の本質的な部分の解決なくして、単に技術革新だけでは人手不足の解消は語れないのです。
ーー若年層、特に30代前後の退職理由を、どう分析されていますか?
かつて公務員の志望動機は「安定」でしたが、今の20代、30代は仕事に「成長」や「やりがい」を求めています。選択肢が少なかった自分の時代と、スマホ一つで世界中の情報や働き方に触れられる今とでは、価値観がまったく異なります。
若手が自治体を去る理由は、複合的かつ切実です。一つは、コロナ禍で見えてしまった「公務員の泥臭さ」への拒否感です。20代の人たちが学生時代に見たのは、市役所の職員が国や病院との調整や防護服を着て現場で疲弊しながら対応する姿でした。「あの世界には行きたくない」と直感的に思う人が増えるのは、無理もありません。特に、採用予定者の話などを聞くと、クレーム対応を含む住民対応業務は避けたいという傾向が強まっているように思えます。
もう一つは、「キャリアが描きにくいこと」です。自治体は3、4年ごとに本人の希望とは無関係な異動が繰り返されます。それまでとは全く違う部署に配属されることもあるため、本人は「3年に1 回転職している」ような感覚に陥ります。これでは専門性が身につかず、将来への不安につながります。さらに、公務員の仕事には「売り上げなどの明確な数字」がないため、評価がどうしても定性的になりがちです。自分がどう評価され、なぜここに異動させられたのか分からないまま 30 代後半を迎えることに、強い抵抗感を持つ若者が増えているように感じます。
結果として、成長意欲の高い層は、一つの政策に特化して専門性を磨ける国家公務員や、実力主義の民間企業へと流れてしまいます。大学時代のインターン等で民間の楽しさに触れる機会が増えているぶん、自治体の「硬直性」がより際立って見えてしまうのでしょう。
ーー自治体の規模によって、人手不足の深刻度に差はありますか?
本質的な課題は変わりませんが、フェーズには明確な差があります。たとえば、人口1,000〜2,000人規模の自治体の職員数は、30〜40名程度ですが、住民が少なくても「業務の種類」は政令市と大きく変わりません。結果、一人の職員が財務と企画を兼任するなど、複数部署の業務をこなすことが当たり前になっています。効率化しようにも、制度設計をする余力のある人さえいません。採用も非常に困難で、退職者が一人出るだけで組織が揺らぎます。こうした状態が10年以上前から続いているのが実態だと思います。
一方で、人口数十万人以上の都市部は今、別の悲鳴を上げています。新しい仕事が増え続ける一方で、旧来の仕事を変えるには「多くの関係者が納得する明確な理由」が必要となり、簡単には業務改革ができずにいます。結果、人事課には毎年増員の要求が来るという状況です。
人手不足で深刻となってくるのは、特定の人に仕事が偏りすぎることです。必死に仕事をしている職員ほど、本人の意思に関わらず難しい課題を抱える部署などに優先的に配属され、数年ごとに激務の部署を行き来するような状況も生まれています。
ーーそうした苦境の中でも、うまく対応している自治体の共通点は何でしょうか?
共通しているのは、「自分たちだけで頑張らない」と決めていることです。なかでも福岡市や神戸市の取り組みは非常に示唆に富んでいます。福岡市や神戸市は、民間の力を積極的に取り入れながら多くの新しいプロジェクトを進めるなど、官民連携が非常に進んでいる印象があります。
また、神戸市では、デジタル部門の職員に多くの民間人材を中途採用していることに加えて、専門職として採用することにより、異動もなく、自らの専門性を磨き続けることができる環境も用意しています。このように、外部の力を積極的に活用していく姿勢が、結果として良い人材を惹きつける呼び水になっているように思えます。
採用面では、従来の「新卒・試験重視」から脱却する動きも出ています。鹿児島市の「カムバック採用(退職者の再入職)」や、SPI方式・民間転職サイトの活用、年齢制限の撤廃など、入り口を広げる自治体が増えています。副業解禁などの動きも含め、公務員のあり方自体をアップデートしようとする姿勢が、選ばれる自治体への第一歩になると感じます。
ーー最後に、今後の官民連携を深めるために、国や自治体、そして民間企業に伝えたいことはありますか。
国も自治体も、現行業務を抜本的に変える時期に来ているのではないかと考えています。たとえば、毎年のように実施されている給付金ですが、自治体が実務を担う現在のフローは、もはや持続不可能です。自治体の自主性も重要だとは思いますが、全国一律の政策であれば、デジタル技術やマイナンバーカード等を活用し、国が直接業務委託などにより効率的に実行する方法も必要になってくると思います。
そして、自治体側は、もっと民間の力を借りるべきだと思いますが、その際に「自分たちの公平性の理念」を民間に押し付けすぎないことが重要です。もちろん自治体の財源は税金なので、公平・公正であるべきなのですが、民間企業にも営利追求という存続意義があるわけですから、そこを理解した上で、お互いに歩み寄る方法を模索する必要があります。
一方で、民間企業側も税金を原資とした事業の予算を受託するということの責任の重さを理解し、価格設定やより柔軟な受託業務の実施も含め、自治体との持続可能な協力体制を真剣に検討してほしいと考えます。
自治体の現場には、20代で数百億単位の予算を動かして「まちを創る」という、ダイナミックな魅力も詰まっています。この魅力を最大化するためにも、官民が対等なパートナーとして、双方が納得できる「折り合い」をつけていく。それこそが、これからの労働力不足社会における希望になるのではないでしょうか。
終わりに
繰り返しになりますが、多くの自治体が直面している「定員割れ」は、単なる欠員問題ではありません。特に土木職などの専門職不足は、道路や橋の修繕遅延に直結し、公共サービスの維持が困難になるという深刻なフェーズに入っています。自治体はいま、「人材を選ぶ立場」から、民間企業と「選ばれる競争」を繰り広げる当事者へと変わっているのです。
ただ、従来のやり方では立ち行かないという危機感は、同時に変革の原動力でもあります。人が足りない現状を「あきらめ」の理由にするのではなく、テクノロジーによる徹底的な効率化と、民間を上回る柔軟な発想を取り入れる「チャンス」と捉え直せれば、必ず次の一手は見えてきます。
今回、簑島氏が語った「民間事業者との共創」も、その重要な鍵の一つです。自前主義という殻を脱ぎ捨て、外部の知見と手を取り合うことで、自治体は再び「持続可能な公の担い手」へと進化できるはずです。
■参考・出典
※1 総務省「地方公務員における働き方改革に係る状況ー令和6年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果の概要-」
https://www.soumu.go.jp/main_content/001048390.pdf
※2 人事院「2025 年度 一般職試験(大卒程度試験 ) 区分別実施結果・合格者の状況」
https://www.jinji.go.jp/content/000011688.pdf
※3 特別区人事・厚生事務組合「令和7年度 類採用試験【春試験】実施状況」
https://www.union.tokyo23city.lg.jp/jinji/jinjiiinkaitop/saiyoshiken/jisshijokyo/r7jisshijokyo/documents/r7ichiruiharujissijokyo.pdf
※4 名古屋市公式ウェブサイト|令和7年度 春実施試験 名古屋市職員採用試験案内(第1類 [大学卒業程度・ 22歳から25歳])
https://www.city.nagoya.jp/res/projects/default_project/_page/001/032/410/r7_1rui22-25.pdf
※5 名古屋市公式ウェブサイト|令和7年度 名古屋市職員採用試験・選考実施状況
https://www.city.nagoya.jp/res/projects/default_project/_page/001/004/342/r71212_joukyou_new.pdf
※6 大阪市:大阪市職員採用試験実施状況 (…>職員採用>大阪市で働きたい方へ)
https://www.city.osaka.lg.jp/gyouseiiinkai/page/0000343968.html#r07-00
※7 26卒学生の1月時点の就職意識調査 ~キャリタス就活 学生モニター 2026(2025年1月発行) – 株式会社キャリタス
https://www.career-tasu.co.jp/press_release/11563/
※8 株式会社インディードリクルートパートナーズ|就職プロセス調査(2026年卒)「2025年6月1日時点 内定状況」
https://www.indeedrecruit-partners.co.jp/wp-content/uploads/2025/06/20250609_VtsLfF_01.pdf
※9 総務省「地方自治の担い手不足:若者の公務員離れ~3つの WHY と見えない解決の糸口」P.16-17
https://www.soumu.go.jp/main_content/000947258.pdf
※10 総務省「令和6年度 地方公務員の退職状況等調査|第5表 普通退職者(在職期間の通算を伴う退職者等を除く)の年齢(令和6年度離職者)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001048098.pdf
※11 横浜市「横浜市記者発表資料」(令和6年12月13日)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/jinji/2024/1213saiyo.files/0004_20241210.pdf
※12 令和7年度採用 中頓別町職員一般行政職(社会人試験)について 第〈 1 期 〉 – 中頓別町
https://www.town.nakatombetsu.hokkaido.jp/bunya/75811/
※13 総務省「佐賀県庁におけるテレワーク導入事例」
https://www.soumu.go.jp/teleworkgekkan/teleworkdays/2019/topics/pdf/20190716/jichitai_jirei1.pdf
※14 地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事(副業)の促進について | 生駒市公式ホームページ
https://www.city.ikoma.lg.jp/0000010732.html
※15 総務省「令和2年度 地方公共団体における今後の人材育成の方策に関する研究会 第2回(令和2年10月22日開催) 事例報告スライド(1)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000717141.pdf
※16 福岡市 福岡市LINE公式アカウント
https://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/social/line.html
※17 職員がドローンで橋梁点検を全て行う「君津モデル」で委託費や時間を大幅減|自治体 DX 事例検索|総務省 地域 DX ポータルサイト」
https://www.soumu.go.jp/denshijiti/digital_transformation_portal/case/r07_dx3_39.html