OPEN FACTBOOK
2023/09/26

人手不足対策案③働く外国人を増やす~「オープンファクトブック#7」

みなさん、こんにちは。うるる取締役 ブランド戦略部長の小林です。

私たちは「労働力不足解決のリーディングカンパニー」として、日本が抱える深刻な社会問題である労働力不足問題と日々向き合っています。その活動の一環として、当問題の実態や私たちの生活への影響について多くの方に知ってほしいと願い、「オープンファクトブック」を実施しています。このオープンファクトブックでは労働力不足にまつわる実態、課題、展望などを解説していきます。

第7回は、人手不足解決の一つとして考えられる「働く外国人を増やす」について、その現状や課題、そして展望に触れます。

「働く外国人」は、どのくらい必要?


パーソル総合研究所が2018年に発表した「労働市場の未来推計 2030」(※1)では、2030年に日本の人手不足は644万人に達し、それを解決する方策の一つとして、「働く外国人を増やす」ことを挙げています。

引用:労働市場の未来推計 2030 – パーソル総合研究所(https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/roudou2030/ )

また、2022年には、独立行政法人国際協力機構(JICA)が、「2040年、日本の外国人労働者数は、42万人が不足すると予測される」(※2)と発表しています。

引用:日本が選ばれる国になるために。外国人との共生社会のあり方 | 2022年度 | トピックス | ニュース – JICA(https://www.jica.go.jp/Resource/topics/2022/20220711_01.html

いずれの情報にしろ、この先、数十万人の外国人に日本の労働力の一端を担ってもらわないことには、日本は持続的な成長を達成できなくなることを示唆しているといえるでしょう。

国も「働く外国人」の確保に動く

日本ではすでに多くの外国人が働いており、その数も年々増えています。
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」(※3)によると、日本で働く外国人は約182万人(2022年10月末時点。前年比約9万5,000人増)を数え、過去最高を記録しています。2022年時点の日本の労働力人口は6902万人ですから、日本の労働力の2.6%が、外国の人によって支えられていることになります。

政府も働く外国人の数を増やすことに積極的です。その象徴的なトピックとして挙げられるのが、2019年に行われた入管法の改正です。国会に提出された改正理由にも下記文言が載っています。

人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に属する技能を有する外国人の受入れを図るため

引用:出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律 | 出入国在留管理庁 資料「理由」
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003761.pdf

この法改正によって、「特定技能」という新しい在留資格が創設され、外国人労働者は単純業務を含む幅広い業種で就労することが可能になりました。さらには、技能実習生として在留していた人も特定技能への移行が可能になり、母国に帰ることなく継続して日本で働けるようになりました。(※4)

なお、2023年4月からは特別高度人材制度「J-Skip」、留学生が日本での就職活動をしやすくなる「特定活動46号」が導入されており、外国人の受け入れ体制は拡大しています。

受け入れにあたっての課題


国を挙げて労働力確保に動く日本ですが、実際に外国人を受け入れ関わっていくのは民間企業であり、民間の人たちです。先述した「外国人雇用状況」によると、外国人を雇用する事業所は過去最高を更新しており(※3)、裾野は拡大しているといえますが、その裏側にはどのような課題があるのでしょうか。

①日本人よりも賃金が低い
厚生労働省の資料「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」(※5)によると、日本人一般労働者の平均月額賃金はおおよそ31万円です。一方、外国人労働者は24万8,000円であり、6万円以上の開きがあります。この背景には、日本人・外国人従業員で業務や待遇が分かれていたり、「外国人だから」という先入観から企業が重要なポジションを与えず、昇給にも影響を及ぼしていたりすることが考えられそうです。加えて、技能実習生に対する待遇と環境の悪さがたびたび報道されていますが、外国人労働者を「安価に労働力を確保できる対象」とみる悪しき慣習もまだまだ残っているといえそうです。

  

②日本で働く魅力が薄れている
「①日本人よりも賃金が低い」にも通じますが、諸外国と比べ、日本は賃金の安い国であることがデータから明らかになっています。OECDによると、日本の年間平均賃金は約455万円であり、加盟国平均である約586万円と100万円以上の開きがあります。これはG7の中では最下位、日本と同じアジア地域にある韓国の約537万円よりも低い賃金です(※6)。
先述のとおり、日本で働く外国人は増えていますが、日本よりも稼げる他国を選ぶ人が増えれば、この傾向は今後変わっていくかもしれません。

出典:平均賃金 (Average wage) – OECD(https://www.oecd.org/tokyo/statistics/average-wages-japanese-version.htm)(当社一部加工)

  

③組織の配慮不足
株式会社オリジネーターが行った「第2回 日本で働く外国人社員の就労環境と転職に関するアンケート(2023年3月)」(※7)によると、日本で働いて不満に思ったことの2位に「日本語ネイティブでないことへの配慮が不足」が挙がっています(ちなみに1位は「給与水準が高くない」でした)。少し古い資料ですが、Adecco Groupが「日本で常勤として働くホワイトカラーの外国人財300名を対象にした調査(2017年)」(※8)でも、「日本語能力が理由で業務に支障をきたしたり、機会を逸したりしたことがある」外国人が多くいることが明らかになっており、一緒に働く日本人はコミュニケーション時の工夫や配慮を意識して行う必要があるといえそうです。

働く魅力のある国・日本に

外国の人は日本で働くことに、「雇用が安定している」「やりたい仕事ができて、やりがいを感じる」という魅力を感じているようです。(※7)このほか、「住みやすいから」「日本に興味があるから」と、安定した治安や自らの探求心をくすぐる何かが、働く動機を生み出している人もいるようです。(※8)

日本で働きたいと思う外国人を増やすためには、日本に根付く良さを伸ばしつつ、同時に抱えている課題を解消することが、これからますます重要になるといえそうです。その方法の一つは、「日本人だから」「外国人だから」というバイアスを取り除き、職務・役割を明確にし、能力に応じた報酬と待遇で、モチベーション高く長く働いてもらえる会社風土をつくることだと考えます。また同時に、お互いの文化や考えを尊重し、認め合うことも大切でしょう。ただ、これらは外国人に限ったことではなく、女性やシニア、子育てや介護をしながら働く人、障がいを持つ人など、さまざまな立場の人に当てはまることです。

アフターコロナを迎え、人の往来も戻りつつあります。企業は政府のつくった体制に任せきりにするのではなく、外国人に対する理解と迎え入れるための環境整備を行い、活躍を支援し続けることが、外国人労働者に日本を選び続けてもらえる手立てになるでしょう。

まとめ

・日本は人手不足解消のため、数十万人単位の外国人に働き手として活躍してもらう必要がある。

・日本で働く外国人は、2022年現在、約182万人。これは過去最高である。

・2019年、日本で働く外国人を増やすことを目的に入管法が改正され、外国人労働者は幅広い産業で働けるようになった。

・しかし、日本で働く外国人は日本人よりも平均月間賃金が6万円以上低く、不満の一つになっている。

・OECD加盟国と比べて日本の賃金は低い。より高い収入を求める外国人が他国で就業するようになると、日本は「働く外国人を増やす」ことが難しくなる。

・外国人労働者に対し、日本語ネイティブでないことへの配慮も必要とされている。

・とはいえ、「雇用の安定」「やりがい」「治安の良さ」「日本への関心」を日本で働く魅力として挙げる外国人は多い。

・外国人労働者を迎える側の企業は、日本人と区別することなく働ける環境づくり、待遇や報酬の明確な提示などに努め、モチベーション高く長く働いてもらえる文化をつくっていくことが大切になる。

 

■参考・出典

※1 労働市場の未来推計 2030 – パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/roudou2030/
※2  日本が選ばれる国になるために。外国人との共生社会のあり方 | 2022年度 | トピックス | ニュース – JICA
https://www.jica.go.jp/Resource/topics/2022/20220711_01.html
※3「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30367.html
※4 外国人受け入れ拡大、19年4月から 改正入管法が未明に成立 – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38706310Y8A201C1MM0000/
※5 令和4年賃金構造基本統計調査の概況|P6. (1)賃金の推移 、P14. (8)在留資格区分別にみた賃金
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/13.pdf
※6 平均賃金 (Average wage) – OECD
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/average-wages-japanese-version.htm
※7 【プレスリリース】第2回 日本で働く外国人社員アンケート調査結果 | リュウカツ【外国人留学生の就職支援・企業の外国人採用支援サイト】
https://ryugakusei.com/news/12406/
※8 日本で常勤として働くホワイトカラーの外国人財300名を対象にした調査|Adecco Group
https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/042

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株式会社うるる ブランド戦略部 広報:小林、高橋、川添
TEL:070-8803-4325  E-Mail:pr@uluru.jp

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