OPEN FACTBOOK
2023/07/21

人手不足対策案②シニア活用~「オープンファクトブック#6」

みなさん、こんにちは。うるる取締役 ブランド戦略部長の小林です。

私たちは「労働力不足解決のリーディングカンパニー」として、日本が抱える深刻な社会問題である労働力不足問題と日々向き合っています。その活動の一環として、当問題の実態や私たちの生活への影響について多くの方に知ってほしいと願い、「オープンファクトブック」を実施しています。このオープンファクトブックでは労働力不足にまつわる実態、課題、展望などを解説していきます。

第6回の今回は、人手不足解決の一つとして考えられる「シニア活用」について、その実際と展望をみていきます。

シニア活用が必要とされる背景

少子高齢化の急速な進行によって日本が人口減少の一途をたどっていることは皆さんもご存じのことと思いますが、人口減少が労働力不足にもつながることは、このオープンファクトブックでも繰り返しお伝えしてきました。

総務省の発表(令和4年)によると、「労働人口」である15~64歳人口は全人口の約6割と依然大きなウエイトを占めてはいるものの、過去最低の水準です。一方、65歳以上の高齢者は全人口の3割弱に及んでおり、毎年、過去最高を更新しています。(※1)

2030年には高齢者が日本の総人口の1/3を占めるまでになるといわれており、パーソル総合研究所は「644万人の人手不足が起きる」と推計しています。その不足を埋める策の一つが「働くシニアを増やす」ことです。同研究所は「64歳男性の労働力率が69歳まで維持され、60代女性の70%が働くようになると、働くシニアは163万人増える。」としています。(※2)

働くシニアを増やすための法改正も

労働の担い手として期待されるシニア。政府は高年齢者が年齢に関わりなく働き続けることができる「生涯現役社会の実現」を目指し、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を、65歳まで講じるよう義務付けています。

また、令和3年には就労意欲の高い65歳以上の高齢者が活躍できる職場環境の整備を目的に、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正が行われており、事業主に対し、主に下記いずれかの措置を努力義務として課しています。(※3)

1.70 歳までの定年の引上げ

2.定年制の廃止

3.70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

4.70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

5.70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

  a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

  b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

働くシニアの実際

実際、日本では多くのシニアが「現役」として活躍しています。内閣府の資料によると、令和4年の労働力人口6,902万人のうち、65~69歳の人は395万人、70歳以上は532万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の割合は13.4%になっています。この割合は上昇し続けていることが、下記のグラフからうかがえます。

引用:内閣府 「令和5年版高齢社会白書(全体版) 図1-2-1-9 労働力人口の推移」

また、65~69歳では2人に一人以上(52.0%)、70~74歳では3人に一人以上(33.9%)、そして75歳以上では10人に一人以上(11.0%)が何らかの形で就業しており、すでに多くのシニアが日本の労働力不足を補う役割を担っています。シニアの働く意欲は高く、収入のある仕事をしている60歳以上の約4割が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しています。(※4)

シニアを受け入れる企業の取組

ここでシニアを受け入れる企業の取組を見てみたいと思います。

まず、内閣府「令和5年版高齢社会白書」によると、上述した「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正に沿って、70歳までの就業を可能とした企業は27.9%となっており、正社員として入社した企業により長く勤めるための環境整備が進んでいます。(※5)

また、定年後にパートやアルバイトとして再就職を試みるシニアの受け皿も拡充しつつあるようです。マイナビが発表した「非正規雇用の外国人・シニア採用に関する企業調査(2023年)」によると、非正規雇用でシニアを採用している企業は66.4%、「今後シニアを採用したい」と答えた企業は65.8%と、すでに多くの企業でシニアが活躍しており、また今後の採用にも前向きの姿勢を見せていることがうかがえます。その理由として最も多いのが、「人手不足の解消・改善につながるから」(51.2%)であり、「専門性が高い・経験が豊富」(37.1%)が続いています。

一方、「シニアを採用したくない」企業がその理由として一番に挙げたのは、「体力面・健康面が不安なため」(53.7%)とのこと。マイナビは、「労働人口の減少が進む中で企業はシニア層の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む必要もあると考えられる」と、言及しています。(※6)

シニア活用がもたらす好影響

ここまで、働きたいシニアがいて、それに呼応するためのルールや受け皿の整備も進んでいることが分かりました。少子化により新しい労働力の確保が年々難しくなることが考えられるなか、何十年にもわたって働いてきたシニアの経験や知識、人脈は即戦力そのものであり、社会や企業にとって頼もしい存在であるといえるでしょう。大いに活用することで、それぞれどのような効果が表れるのでしょうか。大きく二つのことが考えられそうです。

1.若年層の育成につながり、組織に多様性が生まれる

シニアの持つ経験や知識、人脈が若手社員に受け継がれることは企業の成長につながります。シニアの中には重要なポジションで活躍してきた人も多くいるでしょうから、人材育成にも長けているでしょう。また、職場にあらゆる年代の社員がいることで、それぞれの文化や価値観が融合され、組織にレジリエンスが生まれることも期待できます。世代によって社会の捉え方や課題も異なるため、それらを持ち寄ることでビジネスアイデアやビジネスチャンスを生むきっかけになるかもしれません。(※7)

2.経済に好ましい影響を与える

参議院の資料「高齢者の就業について」によると、高齢者の労働力率が上昇するにつれ、実質GDP(物価の変動による影響を取り除いて算出された国内総生産)は上昇し、これにともない実質消費も上昇するため、経済に好循環が生まれる、としています。(※8)

出典:参議院資料「高齢者の就業について~何歳まで働けるのか、働くべきか~」

シニアが活躍する社会はどうなるのか

シニアの活躍によって一つひとつの企業の業績が上がれば、法人税の納税も増えるでしょうし、海外にチャンスが広がれば、外貨を得ることにもなるでしょう。またシニア自身も所得を得られるばかりか、「周りに必要とされている」「社会のためになっている」という生きがいが心身に好影響をもたらし、健康寿命を延ばすことにつながれば、年金や国民健康保険といった社会保険料の抑止になるかもしれません。

このようにして蓄えられた原資を少子化対策に回すことができれば、人口減少の流れを変えることもできるかもしれません。

”風が吹けば桶屋が儲かる”ではないですが、シニアの活躍を国の活力へと転換できれば、国民は豊かになり、国力を再び高めることにもつながっていきそうです。

まとめ

・日本の労働力の3割は、すでに65歳以上のシニアが支えている。シニアの就業率も年々増加している。

・「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の改正から2年、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は3割に届こうとしている。

・6割超の企業がすでにシニアを非正規雇用で採用しており、また「今後も積極的に採用する」と回答している。

・働くシニアが増えることは企業の競争力につながり、しいては国の活力へとつながる。

 

■参考・出典

※1 統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐

※2 労働市場の未来推計 2030 – パーソル総合研究所

※3 厚生労働省資料「高年齢者雇用安定法改正の概要」

※4 内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」

※5 内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)|図1-2-1-16 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の内訳」

※6 「非正規雇用の外国人・シニア採用に関する企業調査(2023年)」を発表 – 株式会社マイナビ

※7 東京都産業労働局「ホワイトカラー系での高齢者雇用の活用事例集」

※8 参議院「高齢者の就業について~何歳まで働けるのか、働くべきか~」

 

<ご取材等を希望のメディア関係者は以下へお気軽にご連絡ください>

株式会社うるる 広報室 担当:小林、高橋
TEL:070-8803-4325  E-Mail:pr@uluru.jp

 

【うるるグループ 概要】株式会社うるるhttps://www.uluru.biz/

設立:2001年8月31日
所在地:東京都中央区晴海3丁目12-1 KDX晴海ビル9F
代表者名:星 知也
事業内容:
◆CGS(Crowd Generated Service)事業 ※CGSとは、クラウドワーカーを活用したうるる独自のビジネスモデル
・電話代行サービス「fondesk(フォンデスク)」
・入札情報速報サービス「NJSS(エヌジェス)」「nSearch(エヌ・サーチ)」
・幼稚園・保育園向け写真販売システム「えんフォト」
・出張撮影サービス「OurPhoto(アワーフォト)」※OurPhoto株式会社にて運営
◆クラウドソーシング事業
・プラットフォーム「シュフティ」の運営
◆BPO事業 ※株式会社うるるBPOにて運営
・総合型アウトソーシング
・高精度のAI-OCRサービス「eas(イース)」
・障害者雇用トータル支援サービス「eas next(イース ネクスト)」

RELATED ARTICLE
関連記事

タグから見つける