人手不足対策案①女性活躍~「オープンファクトブック#5」
みなさん、こんにちは。うるる取締役 ブランド戦略部長の小林です。
私たちは「労働力不足解決のリーディングカンパニー」として、日本が抱える深刻な社会問題である労働力不足問題と日々向き合っています。その活動の一環として、当問題の実態や私たちの生活への影響について多くの方に知ってほしいと願い、「オープンファクトブック」を実施しています。このオープンファクトブックでは労働力不足にまつわる実態、課題、展望などを解説していきます。
さて、ここまでは「労働力不足問題」について大局から情報をお伝えしてきました。第5回の今回は、人手不足解決の対策案の一つ「女性活躍」にフォーカスを当て、取り組みの現状や効果、課題と対策をみていきます。
目次
進む女性の社会進出
日本における女性の社会進出は年を追うごとに進んでいます。厚生労働省の資料によると、1980年、「共働き世帯」の数は、会社員の夫と無業の妻からなる「専業主婦世帯」の1/2程度でした。しかし、「共働き世帯」は年々増え続け、1992年には「専業主婦世帯」と同等に。そして、2021年現在、「共働き世帯」の数は「専業主婦世帯」の2.2倍にまで増加しています。
それぞれ見てみると、1980年に1114万世帯あった「専業主婦世帯」は、2021年には566万世帯と約1/2に減少。一方、「共働き世帯」は、同614万世帯から1247万世帯へと約2倍に増加しています。(※1)
実際、女性は働き手として社会参画し、活躍していることは、最新の厚生労働白書からも読み取れます。下記は同白書からの引用です。
2021(令和3)年の女性の労働力人口は3,080万人(前年比17万人増)で、女性の労働力人口比率は53.5%(前年比0.3ポイント上昇)である。生産年齢人口(15~64歳)の女性の労働力人口比率は、73.3%(前年比0.7ポイント上昇)である。また、女性の雇用者数は2,739万人(前年比18万人増)で、雇用者総数に占める女性の割合は45.5%(前年比0.2ポイント上昇)となっている。
引用:令和4年版 厚生労働白書 第2部第3章第1節 1女性の雇用の現状
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/21/dl/2-03.pdf
女性の社会参画の現在地
共働き世帯が増えた、つまりは女性が外に出て働くようになった背景には、『男は外、女は内』のような性別役割分業に対する意識の変化、サービス業をはじめとする第三次産業の拡大など、いろいろなことが考えられます。
近年にフォーカスすると、保育所の増加による子育て基盤の整備(※2)、法改正による育児休業制度の拡充、さらには「働き方改革」や、2016年に制定された「女性活躍推進法」を一端とする、社会や企業、そして個人の考え方の変化も大きいといえるでしょう。
このようにして女性の社会参画は、男性とそん色がないほど近づきつつあります。しかし、下記のグラフを見ると、男性ほど正規雇用は多くなく、半数以上が非正規に留まっていることが分かります。とはいえ、女性就業者は正規・非正規ともに緩やかながらも増加しており、今後の伸長が期待できそうです。(※3)
今後の日本の人口構成の変化を考えると、女性の活躍はいっそう大切であり、さらなる推進が求められています。
また、“M字カーブ”と呼ばれる、結婚・出産年代の労働力率の低下も、1986年の最低部に当たる「30~34歳」の年齢層の数値で比較すると、2021年は大幅に上昇しています(48.9%→79.4%)。曲線も「カーブ」から「台形」に近づいていることが分かります。(※4)
女性の社会参画は生産性向上に直結
このように、女性が社会で活躍し続けられる仕組みづくりや基盤の整備、風潮の醸成によって、どんなことが期待できるのでしょうか。ここでは各種資料をもとに、その効果を「生産性向上」の観点から見ていきます。
1.人材獲得力の強化につながる
経済産業省の資料によると、女性活躍を含むダイバーシティ経営の恩恵として、日本企業を含め、多くのグローバル企業が「人材の獲得」や「業績の向上」と回答しています。(※5)
2.イノベーション創出の促進などによる、企業価値の向上
同じく経済産業省の資料では、「多様な人材の増加は、生産性の向上、人手不足の解消等の効果が期待できる」としています。しかしながら、「多様な人材の活躍に向けた取組とセットで行うことが非常に重要であり、多様な人材はいるが、それに対応した取組を行っていない企業は、多様な人材がいない企業よりも生産性が低くなる可能性」があるとも言及しています。(※6)
3.プロダクトイノベーション、プロセスイノベーションが生まれる
消費における購買決定権は女性が持つといわれており、女性の嗜好をつかんだ商品・サービスを開発する視点は、企業にとって不可欠です。こうした職種に女性を登用することで、「新しい発想」「新しい商材」の誕生が期待されています。
また、製品・サービスを開発、製造、販売するための手段を新たに開発したり、プロセスに改良を加えたり、環境を整えたりすることもまた、効率性や創造性を高めることにつながる、とされています。(※7)たとえば、工場のラインを女性が作業しやすい高さに変更することも、その一つといえそうです。
このほかにも、「役員への登用をはじめとする女性の活躍推進は企業のパフォーマンスにプラスの効果があるほか、機関投資家による投資判断においても重視されている」(※8)、「人材活用の観点からの積極的なWLB(ワークライフバランス)推進の取組は、企業の全要素生産性(TFP)(※注)向上に寄与する傾向」があり、「女性が出産後も継続就業した場合の方が、退職してしまう場合より企業の負担は小さい」といった指摘も見られています。(※9)
※注 Total Factor Productivity:技術の進歩、生産の効率化など、質的な成長要因によって経済成長を生み出す要因のこと
女性活躍の裏に残る課題
ここまで見てきたとおり、日本の女性活躍は年々進んでおり、生産性に大きく関与していることも分かりました。しかし、先述した「男性と比べて非正規雇用者が多い」ことのほか、「女性管理職が少ない」「男女間の賃金格差が大きい」といった課題も散見されています。
たとえば、政府は2003年、「社会のあらゆる分野において、2020 年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも 30%程度となるよう期待する」との目標を掲げ、取組を進めてきました。しかし、帝国データバンクが行った「女性登用に対する企業の意識調査(2022 年)」によると、企業における管理職に占める女性の割合は平均 9.4%、女性管理職が30%を超える企業は全体の9.5%と、目標には届いていないことが分かっています。(※10)
なお、岸田総理はこの4月、男女共同参画会議の場で「東証プライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%以上にすることを目指す」と表明しており、さらなる取組を行っていくことを示唆しています。
このほかにも「育児・介護休業法」「パートタイム・有期雇用労働法」「次世代育成支援対策推進法」といった各種法令は施行後も繰り返し改正されており、女性がより働きやすく、社会参加しやすい環境づくりに向けた、国による絶え間ない改善活動がうかがえます。
終わりに
女性の活躍を国の発展や企業成長につなげていくには、雇用における男女の均等な機会と待遇が重要であることが分かりましたが、そのためには一人ひとりの女性にとって「ああなりたい」「あの人のように生きていきたい」と思える魅力的なロールモデルの存在が大切ではないか、と考えます。
そのためには、それぞれが描くキャリアパスを実現できる人事評価制度の導入、女性管理職育成プログラムの構築、管理職としてのスキルアップ支援が不可欠ですし、時短勤務やフレックス、テレワークなど多様で柔軟な働き方を可能とする環境の整備も必要です。
さらには、職場の理解促進は当然ながら、男性の育児休業取得の支援、金銭的サポートなど、仕事と生活の調和に向けた一歩踏み込んだアクションも大切になると言えそうです。つまり、私たち企業が取り組めることは大いにあるということです。
女性活躍推進に向け、国はあらゆる対策を講じています。私たちもまた、これらに呼応した努力が引き続き求められています。
まとめ
・女性の社会参画は進んでいる。2021年現在、全世帯のうち2/3以上が「共働き世帯」である
・女性の社会参画の背景には、国主導による制度整備の積み重ねも大きい・女性の活躍が生産性向上につながることを各種データが物語っている
・しかしながら、課題は多く、国もあらゆる対策を講じている
・国の取組に合わせ、私たち企業や個人の努力もまた求められている
■参考・出典
※1 厚生労働省ウェブサイト「令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-|図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移」
※2 厚生労働省子ども家庭局保育課「保育を取り巻く状況について(令和3年5月26日)|P12. 女性就業率(25~44歳)と保育所等の利用率の推移」
※3 総務省統計局「労働力調査2022年|図1 正規、非正規の職員・従業員数の推移」
※4 内閣府男女共同参画局ウェブサイト「2-4図 女性の年齢階級別労働力率(M字カーブ)の推移」
※5 経済産業省資料「ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ(令和2年9月) P.6」
※6 経済産業省資料「ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ(令和2年9月) P.10」
※7 広島県資料「第1章 女性活躍推進はなぜ必要か」
※8 内閣府資料「女性活躍の加速に向けて 令和2年3月10日 経済財政諮問会議」
※9 内閣府男女共同参画局資料「女性活躍推進の経営効果について」
※10 帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2022年)」
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