コーポレートブランディング施策『はたらく私の「じぶん配分」白書』を振り返る。創業時の想いと重なる、うるるの変わらない価値観
2025年9月、うるるが公開した『はたらく私の「じぶん配分」白書(以下、本施策)』は、女性のライフイベントとキャリアに関するリアルな課題を浮き彫りにしました。今回のうるログは、本施策を実施した、ブランド戦略部3名による座談会をお届けします。
施策スタート時の熱量、世の中の共感を呼んだ要因の分析、うるるがこの施策に込めた意図や実施後の率直な感想まで、これまでも多様な働き方を応援してきた、うるるの揺るぎない想いをぜひ感じてください。
『はたらく私の「じぶん配分」白書』特設サイトはこちら:
PROFILE

2007年よりうるるへ参画。
NJSS事業立ち上げ後、複数の事業管掌を経て、現在当社のブランド戦略と人事を管掌。皆がイキイキと情熱をもって働けること追求し、Chief Culture Officerとして企業カルチャーを武器とした企業価値向上に取り組んでいる。https://x.com/seeensk8

2016年、飲食関連サービス大手に新卒入社。飲食店向け営業を経験後、広報チームへ異動。未経験で広報機能を立ち上げ、BtoCサービスの広報経験を幅広く積む。2022年11月に株式会社うるるのブランド戦略部に入社。BtoB向けの広報を担当しながら、インナーブランディングにも携わり、企業カルチャーの醸成・浸透に取り組む。5歳・4歳の2児の母。https://x.com/fjmtkm710
https://note.com/okumi710

大学卒業後、化粧品販売の経験を経て、大手外食企業に転職。新卒採用を担当。年間150名規模の採用経験を3年積んだのち、同社組織開発室にてオウンドメディアの立ち上げ・編集長を担当。2021年にうるるへ入社し、PRを担当。対外広報に加え、インナーブランディングも担う。プライベートでは1児の母。ヨガと落語とベースが好き。
目次
「じぶん配分で働こう」は、うるるのビジョンにつながるメッセージ

古里 2025年2月に新たな労働力の概念である『埋蔵労働力資産』(https://www.uluru.biz/news/14928)を発表してから、この考え方をコーポレートブランディングの軸に据え、今回初めてより深く掘り下げる取り組みとなりました。
本施策は、多くの働く女性やインフルエンサーに協力をいただきながら、約1か月にわたって段階的に情報発信を行いました。その結果、特設サイトのユニークユーザー数は2万人を超え、女子SPA!などのメディア10媒体での掲載、調査レポートの一部は日経新聞の記事にも引用されました。
今回の座談会では、改めて施策の意図や目的なども踏まえて振り返れるといいなと考えています。
高橋 限られた労働力をいかに創出・活用していくかが『埋蔵労働力資産』の考え方ですが、実際にその労働力を創出・活用するために、社会・個々人双方で、どういった考え方が必要なのか、どんな固定概念から解放する必要があるのか、を突き詰めたのが今回のブランディング施策でした。
小林 『埋蔵労働力資産』は、「埋もれている労働力」と「埋もれゆく労働力」に分かれています。
(詳細についてはレポートをご覧ください▶https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:86907453-c72f-4af0-b5e0-f4d374371d09)

その「埋もれている労働力」の大きな構成要素としては、今後リソースの活用が期待される「女性」・「シニア」・「外国人」が挙げられます。今回はその中でもうるるが創業時から注力してきた「女性」の労働力の創出・活用にフォーカスを当てて施策を立案・実施していこうと議論したんだよね。
古里 そうですね。施策を「女性」に尖らせると決め、Who/Whatの整理やHowについて多くの議論を重ねてきました。その中で、「じぶん配分で働こう」という、本施策に繋がるキーメッセージが出てきたのですが、最初にこのキーワードを聞いたときはどう思いましたか?
高橋 私は、闘病しながら『シュフティ』でワーカーとして働いてくださっていた方の話を思い出しました。

※参考)「生きがいを見つけて」35歳末期乳がん患者の告白―読売新聞https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20170726-OYT8T50015/
その方からいただいた感謝のメールを、以前伸輔さんに共有いただいたことがありました。
内容としては、『シュフティ』が生きがいを与えてくれたことに対する感謝の気持ちを綴ってくださったものでしたが、そのメールを拝見した後、ワーカーさんは何を伝えようとしているのか、ずいぶん考えました。
その結果、「働く」とは利他的な活動でありながらも、巡り巡って自分のためにもなっている、という答えに行き着きました。そして、これをどう社会に伝えるのがベストなのかを考えていたときに、「じぶん配分で働こう」が出てきたんですよね。自分にはない表現だったので、「そう来たか!」のような、しっくり感がありました。
古里 ニュアンスや伝えたいメッセージなど思い描くものはあるけれど、何て言語化すればいいんだろう、みたいな感じでしたよね。そこがガチっとはまったのが、この言葉でした。
私は、「女性」にフォーカスを当てるとしたら、「自分を大切に」というメッセージを発信できるといいと考えていました。

働く女性は特にライフステージの影響を受けやすいです。主に育児や介護、配偶者の転勤などが挙げられますが、行動に制約が出たり、それによって思ったように働けないもどかしさや働き方を変えざるを得ない状況が生まれると思います。それでも働きたいと考えている女性に対して、何か応援や承認のメッセージを送りたいと考えていました。この言葉にはそれが詰まっていて、とてもいいなって思いました。
伸輔さんはどうですか?
小林 みんな揃って働こう、もしくは育児に専念しようって、「二分法の罠」っていうんだよね。他にも選択肢はあるはずなのに、AとBのどちらかしか選べないって思い込んでいる状態を指すもので、たとえば「女性活躍」は、まさにこれだと思っています。

その点、「じぶん配分で働こう」には、AでもBでもなくていい。どう配分するかは自分で決めていいんだよ、というメッセージが込められています。そう発信することで、現在悩んでいる人の自己肯定感が高まればいいなって思ったし、社会に向けても「どちらかじゃなくていいんだ。配偶者や周りの女性が悩んでいるのなら、自分もそのスタンスで何かを伝えてあげたい」のような共感を生み、社会的な動きにつながっていくといいなって思いました。
古里 『埋蔵労働力資産』を発表したときに、一人の記者さんから「もっと働けってことですか?」と、質問が上がったんですよね。「じぶん配分で働こう」というキーメッセージは、それに対するアンサーになったんじゃないかと思っています。うるるは労働力不足を「誰かに埋めさせる」のではなく、一人ひとりの“じぶん配分”を尊重し、その前提で社会を成り立たせていく未来を目指していますって。
小林 そうだね。うるるはビジョンに、『労働力不足を解決し 人と企業を豊かに』を掲げているものの、どうしても「労働力不足」に目が行きがちです。けれども、うるるのゴールは「人と企業を豊かに」であって、労働力不足の解決はそのための手段です。今回のメッセージは、僕たちのビジョンの本質をとらえたものだと思いました。
インフルエンサー×SNSで挑んだ生活者からの共感づくり
古里 SNSを活用したPR活動は、うるるにとって初めての取り組みになりました。多くのインフルエンサーに、24時間の過ごし方を円グラフで表した『みんなの24時間「じぶん配分」ギャラリー』にご参加いただき、SNSでも投稿していただきましたが、印象に残っていることはありますか?

高橋 「じぶん配分」は十人十色で、ギャラリーを見て、それに勇気づけられる人もいれば、悲観的な人、批判的な人までさまざまでした。このように、たくさんの反応を可視化できたことは、まさにSNSで拡散されたからであり、一つの成果だと思います。それぞれに自分の暮らしを振り返る機会になっているんだなって感じました。

古里 私も「じぶん配分」グラフを実際につくってみたことで、自分を見つめ直すきっかけになりましたし、誰もが悩みながら、その時のベストな配分を探しているからこそ、興味を持ってもらえるんだと感じました。ご協力いただいたインフルエンサーさんのメッセージにも個性が表れていましたし、それらに対するコメントを読みながら、響いてよかったなって思っています。
そして、普段のメディア露出では、記事の掲載までは確認できるものの、その先の生活者がどんなリアクションを取っているのかまで観測できないぶん、今回SNSを活用したことでUGC※を通じてリアルな反応を見られたので、UGCの価値とありがたみを感じました。
※User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)。企業ではなく、個人発信のコンテンツを指しており、たとえば、動画投稿やSNSの投稿、ブログ記事、口コミサイトのレビューなどが該当する。
小林 これはうるるにとって新しい挑戦になりましたよね。従来のメディアに取り上げてもらうことと同等に、いろいろな人からの共感やうねりを起こしたいというゴールがあったからこそ、これまでと違うメディア――SNSやインフルエンサーの活用といったチャレンジができて、とても良かったなって思います。新しい武器が一つ加わったように感じています。
得られたのは、「仕事」「家庭」はどちらも尊重されるものという気づき
古里 本施策は当初、「働きたくても働けない方」をコアターゲットにしていましたが、戦略的にはコアターゲットだけに閉じずに、働いている方まで範囲を広げた経緯があります。これは、『働きたくても働けないよね』っていうネガティブな共感ではなく、そのようななかでも働いて得られるやりがいなどポジティブな共感を集めたい思いがありました。実際、ねらいどおりの反応を得られたと思うのですが、お二人は生活者の反応をどうとらえましたか?
高橋 私自身、働く女性の一人として思ったのは、自分が設定した「ありたい姿」に、思っている以上にみんながんじがらめになっているということです。仕事も家庭も頑張らなきゃって。けれども、それは風潮としてあるだけで、仕事と家庭のどちらが大変なのか比べること自体、不毛なことだと改めて思いました。その点、充実した1日をグラフ化することで、「毎日を充実して過ごすために、自分はどうあるべきなのか」と、考えるきっかけを提供できたかもしれないと、インフルエンサーの方々の投稿を見て感じました。他の人の考えや世間の風潮にとらわれず自分自身を見つめ直すことは、とても大事なことだと思うので。
小林 僕が印象に残っているのは、インフルエンサーの一人・まぼさんの「くらしとしごと、はかりにかけることのできない大切なものにどう時間を割り当てていくのか」というメッセージです。
秤にかけられないものを無理してかけようとしている風潮に対する気づき、そもそもかけることのできないものであるという気づきの二つがありました。「どっちが大切なの?」という話ではなく、どちらも自分なりに大切にしていくことが、正しい捉え方だと思いましたね。
「創業時から貫いてきた想いが一つのカタチになった」
古里 最後に、本施策を通じて得られた学びや、うるるらしいと感じた打ち出し方や考え方はありましたか?
小林 「自分なりの配分でいいんだよ」っていう前向きさや、自己肯定感の向上に資する取り組みになった点は、うるるっぽいなって思います。
もともと、うるるって在宅ワークを働き方の新しいスタンダードにしようと起業したんですよね。イメージは、小さなお子さんを抱える女性が自宅で子どもをあやしながらパソコンに向かうような。「その時間は仕事しているの? それとも子育てなの?」って問われたら、「両方です。育児しながら仕事をしています」っていうのが、僕らが創業当時に思い描いたものだったのね。今回の施策は、そこと重なる表現になりましたよね。
高橋 私たちってSaaSを提供するIT企業ですが、そこと働く女性に向けたアプローチが、どうつながるの?って傍から思われているかもしれません。けれども、私たちはこれらの事業を通して、働きたくても働けない人たちと向き合い、その人たちが働ける環境をつくり、新たな価値を築いてきた歴史があるんですよね。
その歴史こそが、うるるの競争優位性の原点でもあり、今回の施策を通じて改めてそこに触れられたことで、うるるらしさを感じました。
古里 私は、この施策は『埋蔵労働力資産』における「働きたくても働けない労働力」の創出・活用というお題目の解像度を引き上げたと感じています。というのも「埋蔵労働力資産」の概念を発表した際に、働きたくても働けない労働力は、15.1億時間あるというレポートを出しました。共働きが一般化されている現在において、この解像度を世の中に対してどう引き上げられるかを課題に感じていたのですが、今回の施策は、具体的な事例をもってそこの部分の輪郭をよりはっきり伝えられたと感じています。
希望通りに働けない状況は、限られた人にだけ起こる問題ではなく、誰にでも起こり得るグラデーション的な変化であるということが、多くの働く女性の生の声とそれらに対する共感を通じて世の中に発信できたと感じています。
高橋 引き続き、『埋蔵労働力資産』というテーマと引き続き向き合い、社会との関係性をより強固にしていけたらいいですね。



