2026/9/3

    「AIを使うこと」は、目的じゃない。うるるがAI活用方針に込めた思い。

      生成AIが、すでに私たちの働き方を大きく変え始めています。その波にいち早く飛び込み、うるる全社のAI活用を牽引してきたのが、執行役員VPoEの長屋洋介です。1人目のソフトウェアエンジニアとして開発部門を立ち上げ、いまはエンジニアリングとAI活用の強化を担う長屋。そんな長屋が今見据えるのは、エンジニア先行のAI活用を全社へ拡張することです。

      このたびうるるが発表した「社内AI活用方針」※の“裏側”には、どんな思いがあるのか。効率化の先に見据える景色、そして一人ひとりへのメッセージに迫ります。

      ※2026/9/3 プレスリリース『うるる、全従業員を対象とした「AI活用方針」を策定 エンジニア先行のAI活用を全社へ拡張 ~現場・経営・全社を横断する5つの戦略と「業務イノベーションチーム」でAIネイティブ企業へ~』
      https://www.uluru.biz/news/29865

      ※本記事では、生成AIを便宜的に「AI」と表記します。

      INTERVIEWEE PROFILE

      長屋 洋介
      執行役員 VPoE

      大手SIerなどを経て、2008年よりうるるへ参画。
      1人目のソフトウェアエンジニアとして当社の開発部門を立ち上げた後、複数の事業管掌を担当する。
      現在は、現在は、エンジニアリング部門とAI活用の強化を担う。
      好きなものは、キャンプとサウナと美味しいご飯。テントサウナを持って出かけるキャンプは、大自然の中で味わう至福の時間。

      まず、触れることから。

      ――2022年にChatGPTがリリースされ、本格的に生成AIが登場してから、私たちの仕事には様々な影響がありましたよね。まず、AIに対する見方に、この数年で変化はありましたか。

      大きな変化がありました。AIが登場した当初も驚きはあったけど、ハルシネーションや活用に慣れていないせいもあってか、最初から世界を変えるソリューションだと気づいていたわけではありませんでした。

      Govtech事業における開発では以前から機械学習の活用に取り組んでいたのですが、LLMの活用検討を進め、色々と試用を進めるうちに「これはやばいぞ」と。インターネットが普及したときと同じくらいのインパクトを感じました。

      当社内の活用推進を考える上で特に大きかったのは、頭で理解するのではなく、自分の手で使って実感したこと。「AIは触らないとその真価がわからないな」と感じました。だから社内の活用も、この経験をベースに方針化していくべきだと、経営陣にも提言してきました。今回の方針は、そうした現場の実感と経営の判断が重なって形になったものです。

      2024〜25年にソフトウェア開発へAIが一気に入ってきたときも、エンジニアメンバーには投資対効果を性急に求めず、とにかく試す姿勢でスタートしました。まず、触ってもらう。そうじゃないと何も始まらないと考えたんです。

      ――先日うるるでは、社内AI活用方針に関するプレスリリースを発表しましたよね。1年前にLLM活用推進計画を掲げていましたが、まずはその違いについて教えてください。

      LLM活用推進計画は、社内メンバーに向けて「社内でのAI活用に対するスタンス」を示したものです。キーメッセージは「労働力不足の解決を目指す私たちが、AIを活用し生産性高く働くことに対する、最高の体現者になろう」というもの。

      全体像やスタンスこそ示しましたが、一番伝えたかったのは「現場から成功の”型”を創り、みんなで使う」ということ。サントリー創業者・鳥井信治郎氏の言葉を借りれば、要するに「やってみなはれ」です。とにかく触って、やってみる。実験と学習の期間と定めて、まずは行動を起こすことを社内に呼びかけました。

      触ってみて、ぶつかった壁。

      ――うるるには正社員だけで300人以上のメンバーがいます。LLM活用推進計画としてのAI活用の浸透度は、当初いかがでしたか。

      正直に言うと、狙った通りにはいきませんでした。当社はGoogle WorkspaceにGeminiが標準搭載されていたので、全従業員がAIに触れられる環境はありましたが、実際に使っていたのは300人のうちごく一部。興味のある人だけが触っている状態でした。多くの方にとっては「触ってみて」と言われても、どう触ればいいか分からない。それが現場のリアルでした。

      今では当社の大半のソフトウェアエンジニアが実践しているAI駆動開発※も、導入当初は利用が二極化していました。同様に初速は低空飛行でしたよ。

      ※2025/9/2 プレスリリース『うるる、AI 駆動開発を推進 エンジニア一人あたり月額 100 米ドルの AI ツール利用を支援 〜AI を前提とした次世代の開発体制を構築し、開発生産性とスキル向上を目指す〜』
      https://www.uluru.biz/news/15789

      ――そこから、社内のAI活用にどうコミットしていったのでしょうか。

      最初は、地道な草の根活動でした。社内でゴリゴリ進めてくれるキーパーソンを見つけて、一緒に取り組み始めることを大事にしていました。AI活用の有識者を招いたセミナーや、エンジニアリング部門横断の推進チーム、コーポレート部門の有志で行った交流会など、まずはきっかけづくりと活用法を知ることから始めました。

      経営陣にも「先陣を切ってAIを使ってもらいたい」とお願いしました。トップダウン型でAI活用を推進するエネルギーが欲しかったので、素直に協力をお願いしました。そのために経営陣向けのワークショップなども開催しました。

      意図的に避けていたのは、「最初から活用の型にはめること」と「最初から費用対効果を追求すること」です。AIをどう活用したらいいか?分からない、色々試さないといけないのに制限をかけるのは悪手だと捉えていました。

      こうした積み重ねもあって、社内にも徐々にAI活用の機運が高まっていくのを感じました。Slackの雑談板で「こんなAI活用しました〜」という自発的な投稿を目にすることが増えてきて、「いい感じだぞ」とガッツポーズです。

      方針を出すなら、いま。

      ――機運が高まっていると確信したきっかけは、あったのでしょうか。

      発表のタイミングは、以前からずっと慎重に図っていました。「今だ」と思えたのが、7月の社内イベント「ビジョンカップ」です。

      ULURU VisionCup2026 キービジュアル

      うるるでは例年、ビジョン達成に向けて、その年に切り込みたいテーマでイベントを開いています。今年は「AI活用」をテーマにしました。方針を共有するとともに、実際の取り組みや活用法を、エンジニア・非エンジニア問わず発表してくれるメンバーを募って、ピッチしてもらいました。当日は8組のメンバーにピッチしてもらったんですが、社内で本当に大きな反響がありました。

      イベント後は、目に見えてClaudeの利用申請が増加しました。AI活用支援をしている技術戦略チームへの問い合わせも継続して舞い込んでいました。自分ごと化が進み始めた今なら、方針として出しても、それは縛るものではなく背中を押すものになる。そう確信しました。

      またこのタイミングで、部門横断で業務改善を進める「業務イノベーションチーム」もCOO主導で立ち上げることを発表しました。先日、説明会を実施しましたが、50人以上のメンバーが興味を持って参加してくれました。現場の熱量と、経営の意思が、相互作用しながら動き始めたんだと思っています。

      ――そのうえで改めて、この方針を”言葉”にした意図を教えてください。

      大きく2つあります。1つは、「FY30~32の売上高200億円」の達成に向けてです。

      AI活用は、僕らにとって単なる効率化の手段ではありません。うるるが目指す「労働力不足を解決し 人と企業を豊かにする」というビジョン、そしてその実現度を測る指標として今年5月に開示したのが、2030~32年に売上200億円という目標です。それは決して簡単な道のりではなく、これまでの成長角度をさらに引き上げていく必要がある。

      そこへ向かうには、AIによって人の仕事を減らすのではなく、一人ひとりがより大きな価値を生み出せる組織にしていくことが欠かせない。そのためには、AIをどう活用していくのか、みんなが同じ方向を向ける新たな指針が必要だと考えました。そこで、LLM活用推進計画をアップデートし、今回の「社内AI活用方針」を策定しました。 

      2026年3月期 決算説明資料 中長期的な成長イメージ

      もう1つは、ステークホルダーに向けて、うるるのスタンスをはっきり示すこと。近年、人的資本経営に注目が集まっていますが、うるるはそれ以前から組織づくり・カルチャー醸成に力を入れてきました。「スキルフィットより、カルチャーフィット」。時代が変わっても、「そこで働く人」のことを大切にする姿勢は変わりません。

      AIをめぐる議論はいろいろあります。そのなかで僕らが大事にしたいのは、「AIにどう向き合うか」を、自分たちの言葉で示すこと。「効率化=人員削減」という見方もありますが、うるるとして、それを前提にAI活用を進めているわけではありません。AIを活用することで作業効率は、たしかに格段に上がります。でも、それを活かすのは、まぎれもなく人です。ITと人のチカラ、それぞれの良さを理解してサービスに組み込んできた僕らの基本姿勢は、AIに対しても変わりません。人のチカラが活きるシーンや業務は、形を変えながら、これからも必ず残っていく。

      それは社内の業務効率でも同じです。ビジョンという山をどう登るかは、メンバー一人ひとりの考えが重要で、AIはあくまでパートナー。AIが得意な部分はAIに任せながらも、うるるが「人」を大事にする姿勢は、これからも変わりません。 

      AIは増幅器。だから、姿勢は変わらない。

      ――改めて、うるるメンバーにはAIとどう向き合ってほしいですか。

      大前提として伝えたいのは、「AIを使うこと」自体は目的じゃない、ということ。大切なのは、AIを使って何を実現したいか。その意思がまずあって、AIはそのための手段として活用する。その順番が大事だと思っています。

      AI活用で生産性が上がれば、それは会社の粗利につながり、粗利が増えれば、働く一人ひとりの年収にも還元されていく。会社の成長と、働く皆さんの豊かさを同時に実現する。それが、うるるのAI活用の土台にある考え方です。 

      そのうえで、僕はすごく前向きに捉えています。うるるには「うるるスピリット」という大切にしている価値観があり、対人能力、チャレンジする力、自分で考えて動く力といった、いまの時代に求められている要素がちゃんと入っています。知識や情報の引き出しをAIが補ってくれる時代だからこそ、その真ん中にある”人としての力”が、いよいよ効いてくる。そういう組織をずっとつくってきた僕らにとって、これはむしろ追い風。うるる向きの時代が来たな、と本気で思っています。

      ――なかには、変化に不安を感じる人もいると思います。

      正直、これから仕事の”中身”は変わっていくと思います。でも、それは決して怖いことじゃない。大事なのは、変化を楽しんで、自分を変えていけること。うるるの仲間は、もともとその気質を持っている人たちですから、必要以上に心配しなくていい。経験が浅いからといって、任せる機会を絞ることはしません。渡す機会は同じで、変えるのは求める質とサポートの量だけです。むしろ、ぜひ一歩を踏み出してほしい。

      そして、踏み出す人を放っておくなんてことはありません。今年は、非エンジニアにとってAI活用が大きく広がる1年。技術戦略チームも現場に入り込んで、この半期だけでも10本以上の並走支援を進めています。やる気さえあれば、とことん伴走します。

      ――「試していこう」だけでは活用は進まず、ルールづくりも必要なのでは?

      活用が進めば「何をやっていいの?」「何をやってはだめなの?」とルール作りを求める声が増えていきます。安心して、そして十分に活用するためにはブレーキももちろん必要です。

      当社でもそうした声が増える中で、検討を行っていきました。

      ルールの作り方は、対象がAIでも変わりません。「リスク評価、規程・ルール、ガイドライン」を丁寧に作成していくだけです。そして、味付けは当社の「AI活用方針」。「AIの活用を積極的に推進する」というスタンスをしっかりと全体に散りばめていきました。

      推進のアクセルとルールのブレーキは、活用を進めるための両輪なので、バランスを取りながらアップデートを続けていきたいと思っています。

      ――最後に、社員のみなさんへ一言お願いします。

      AI活用を推進している私が言うと違和感があるかもしれませんが、AIは万能ではありません。

      重要なのは皆さんの持っているドメイン知識であり、行われる深い考察であり、改善へのモチベーションです。AIは強力な相棒ですが、あくまで増幅器です。

      増幅器であるAIは、めちゃくちゃたくさんの出力をあなたにぶつけてきます。同僚や社外からの情報量も格段に増えていることでしょう。時に読み飛ばしたくなるかもしれませんが、ぐっと堪えて、理解できるまでかじりついてください!あなたがちゃんと理解しない限り、AIを活用しても良い答えにはたどり着けないと思います。

      いずれAIを使うことはもっと一般化していくと思います。ググるのが当たり前になったのと一緒だと思います。なので、楽しみながらどんどんAIを試し、AI理解を深めた上で、ドメイン知識を深めながら業務の本丸で活用していきましょう!

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